省エネで健康的!長持ちする住まいづくりのお手伝い 住まいるサポート

  • 投稿日2020.9.30
  • 更新日2023.11.8

建築や不動産の豊富な経験を活かし、これから注文住宅を建てるための方に向けてアドバイスを行っている住まいるサポート株式会社の高橋彰さん。高橋さんの提唱する「高性能な住まい」とはどんな住まいなのか、を中心にお話を伺いました。

事業の内容を教えてください

戸建の注文住宅を建てる方に対し、「高性能な住まいの相談室」というサービスを行っています。高性能な住まいというのは、具体的には、耐震性や耐久性を十分に満たした上で、「結露のない健康・快適な住まい」のことで、それを実現できる高気密・高断熱の住まいづくりを中立的な立場でサポートします。そして、信頼できる高気密、高断熱の家を作っている工務店やハウスメーカーを無料で紹介しています。

高気密・高断熱が高性能の家の条件というわけですね。高気密とはどういった意味ですか?

高気密な家というのは、簡単に言うと隙間風がない家のことです。高気密って風通しが悪くて、息苦しいのでは?と誤解されがちなのですが、風通しと隙間風は全く別の話なのです。

風通しというのは窓を開けた時に風が通りやすいか、のことで、間取りや窓の配置で決まります。それに対して、隙間風というのは壁の隙間から発生するもので、防ぐには気密シートを貼るなどの気密施工が必要です。気密性能を高めると不快な隙間風はなくなる代わりに換気設備による計画換気が必要になりますが、外気を取り入れる際にフィルターで花粉やPM2.5を除去することもできるので、とてもきれいな空気環境で過ごすことができます。

しかし、日本には断熱の基準はあっても、気密の基準がないこともあり、気密性能にこだわっている住宅会社はとても少ないのが実情です。家を建てる際に見逃されがちな観点なのですが、満足いく住まいづくりのためには重視していただきたい点です。

高気密が重要、というのはよくわかりましたが、どうやって判断したらいいのですか?

気密性能というのは、設計値で出せるものではなく、一棟ごとに引渡し前に気密測定というのを行わないとその家の気密性能はわかりません。

一流と言われる大手ハウスメーカーも、ほとんどは気密測定を実施していないんですね。性能に本当にこだわっているごく一部の住宅会社だけが気密測定を行っていいます。そういったところに施工をお願いするのが間違いないですね。当社がご紹介する住宅会社はすべて気密測定を実施している会社です。「高断熱のあたたかい家」をうたっていても、多くの場合は高気密ではないので、注意が必要です。住宅会社を選ぶ際には、必ず「気密測定は行っていますか?」と確認していただきたいと思います。

では高断熱というのはどういったことですか?

断熱性能を上げると、外気温の影響をあまり受けず、家中が均質な温度に保たれるので、とても快適になります。特に窓の断熱性能をあげることが重要です。

さきほど断熱の基準はあると申しましたが、実は我が国の基準は諸外国に比べるとダントツで低い水準に留まっています。例えば窓の断熱性能の基準は、日本では、熱の通しにくさを示すU値が省エネ基準は4.65、そして2.33以下で最高等級の★4つの評価を得られます。値が小さいほど断熱性能が高いことを意味しています。日本の基準に対して、例えばドイツは最低基準が1.3、米国も南部地域以外は1.99以下でないと使うことが認められません。つまり、日本で最高等級の評価が得られるサッシをヨーロッパ、北米、中国の北側の地域などに持っていくと、多くの国で最低基準を満たしていないので使用することが許されません。

また、日本では冬に結露が起きるのはあたりまえですが、多くの国では結露がおきると、住宅会社は責任を問われ、修理しなければならないのです。そのため、高断熱の樹脂サッシや木サッシが主流を占めています。結露ができやすいアルミサッシを使っているのも実は日本だけなんですよ。結露が生じるのは仕方ないものと考えている方が多いようですが、高気密・高断熱化すれば結露は起こらなくなります。

結露ができると何が悪いのですか?

結露ができると、カビが生えやすくなります。カビはダニのエサになるため、ダニも増え、アレルギーや喘息の原因になります。高断熱住宅に引っ越すとカビ・ダニの発生を抑えられるため、アレルギーが治ったケースも多くあります。

特に厄介なのが、壁内結露です。これは、家の中の湿気が壁の内側に入って結露するものです。壁内結露は、壁の中でカビやダニを発生させたり、壁内が湿潤環境に保たれるので、柱の腐れやシロアリ被害なども引き起こし、家の耐久性にも悪影響を及ぼします。見えないところで起きているので、とても怖いんです。これを防ぐためには、室内の湿気が壁の中に入り込まないように気密性能を確保することが大切です。

また、日本ではヒートショックで年間19,000人もの方が亡くなっています。ヒートショックの原因は室内の温度の格差で、冬に入浴中やトイレで倒れる方が多いです。また、死には至らなくても、半身不随等の後遺症で苦しみ、健康寿命を縮めている人がその何倍にも上っていると言われています。ヒートショックを防ぐには、家の中の温度をどの部屋も均質に保つことが重要なのです。そのために必要なのが高断熱・高気密の家づくりです。冬の服装で例えると、高断熱はセーター、高気密がウィンドブレーカーのようなものだと思っていただければと思います。セーターだけで真冬に外出すればどんなに分厚くても寒いのと同じです。

そういった家は高価格なのではないですか?

普通の省エネ基準の家に対して、200~300万円の追加費用でかなりの高性能になります。でもこれだけ見るとやはり高い、と感じられるかもしれません。ところが、冷暖房に掛かる光熱費が格段に安くなりますので、ローンの増加分と相殺するとむしろちょっと安くなります。実は、高気密・高断熱住宅の方が得なんですね。さらにローン完済後は、光熱費の削減分がまるまるふところに残りますから、老後の暮らしの余裕にもつながります。

また、太陽光パネルやエコキュートなどの省エネ設備は15年くらいで更新時期を迎えますが、それに対して高気密・高断熱の躯体性能は多少の劣化はあっても、基本的にはずっとその性能は維持されます。ですから、長期的にみても設備による省エネよりもお得と言えます。住宅の省エネ性能向上にお金をかけるのならば、設備よりも躯体性能の向上を優先するべきなんです。

車を燃費で選ぶように、家も燃費性能で選ぶようになっていただきたいですね。

高橋さんはなぜこのお仕事を始められたのですか?

大学は建築が専門で、その後不動産や都市計画の仕事をずっとしてきました。その中で、国土交通省と連携して、BELS(建築物 省エネルギー性能表示制度)制度の立ち上げなどに携わってきました。建築物省エネ法ができた際には、の制度普及のためのディベロッパーやハウスメーカー向けの勉強会の講師を数多く努めました。

しかし、性能を上げるということはコストを上げることであるため、消費者の理解を得るのは困難で、結局住宅業者としては売りやすい安普請の家を勧める、という状況が続いています。地球温暖化対策等もあり、欧米の住宅の性能がどんどん上がっていっているのに対して、日本は取り残されてしまっているんです。

消費者にとって一生に一回の住まいづくりを気密・断熱性能について知らないままに安普請の家を建てている現状を何とかするには、消費者が基本的なことを理解することが大事だと思い、消費者の方への情報発信を始めました。まずは日本の住宅性能の現状や高気密・高断熱住宅のメリットを知っていただいた上で、どんな家に住むかを判断いただければと思いました。

高気密・高断熱の要素についても相談に乗っていただけるのですか?

ほとんどの方が家を建てるのは初めてで、住まいづくりはわからないことばかりだと思います。間取りや耐震なども気になるところだと思いますので、そのあたりも含め無料でアドバイスを行っています。

また、こちらは有料になりますが、提携しているファイナンシャルプランナーと、資金シミュレーションも行うこともできます。

ご自身も高気密・高断熱の家にお住まいなんですか?

そうですね。高気密・高断熱の中にもレベルがあって、我が家は欧州の基準に比べれば性能の劣る家ですが、日本の住宅の中ではそこそこの性能の家です。欧州基準まで行かなくても、冬でも寝ている時にかけているのは薄い布団1枚で、朝に布団から出るのがつらい、というのもないですし、結露も全くありません。妻は、キッチンが寒くなくて快適だと喜んでいます。

十分な性能の高気密・高断熱住宅だと6畳用のエアコン1台で家中が快適に空調できます。それで家中を均質の温度に保つことができて、足元も全然寒くないので、設置費用も光熱費も高い床暖房なんてなくても快適です。

実際どんなお客様がいらっしゃいますか?

やはり、初めて家を建てる子育て世代の方が多いですが、意外にシニア層の方も多いです。例えば現在、築35年の家に住んでいる77歳のおばあさまが、今の家が夏暑く冬寒いということで、高気密・高断熱の小さな家を建てるお手伝いをしています。

お客様が喜んでくださる顔を直にみえるのがとても嬉しいですし、おそらく健康寿命が延びるだろうなと思うと私にとっても大きな喜びになりますね。

お年寄りが、寒い家で我慢して暮らしているケースがとても多いと思います。ヒートショックのリスクをなくし、健康寿命を延ばして、豊かな老後をお過ごしいただくためにも、経済的に余裕があれば建替えや断熱リフォームをおすすめしたいです。

また、おじいちゃん、おばあちゃんの家は寒くて居心地が悪いので、孫や子どもが来たがらないという話もよく聞きますね。断熱リフォームによってそういった問題の解決も期待できます。

リフォームでもOKなんですね

断熱のリフォームは、面積にもよりますが、だいたい500~600万円くらいの予算でリビング、お風呂、脱衣所、トイレの水回りの一新も含めて、そっくり高気密・高断熱化することが可能です。これだけでも、相当快適になります。まだ、断熱リフォームに力を入れているリフォーム会社は多くありませんが、信頼できるリフォーム会社のご紹介も行っています。

建売や賃貸住宅でそういった家を選ぶことは可能なのでしょうか?

正直言ってかなり難しいです。一般的に、注文住宅に比べて建売住宅の性能は低いですし、
断熱性能を明らかにしている物件は多くありません。賃貸のアパートも同様です。

現在新築住宅で省エネ基準を満たしているのは5割程度です。一つの基準として、長期優良住宅と言われるものや、住宅ローン「フラット35S」が使える物件は省エネ基準を満たしているので、最低限のレベルという意味ではそれが目安になりますね。

でも先ほども触れましたが、日本の省エネ基準の要求レベルはドイツなどの基準に比べるとでは30年前の水準です。そのレベルですら日本では義務化されていません。欧米ははるかに厳しい基準への適合が義務付けられています。日本は省エネ先進国と思われていますが、実態は後進国。それをふまえて、賢い住宅選びをして頂きたいですね。

なぜ日本は義務化が進まないのですか?

実は、2020年までに戸建住宅も含めて省エネ基準への適合が義務化されることが閣議決定されていたのですが、数か月前に国土交通省が住宅については義務化の断念を発表しました。理由は、現在の住宅業界のレベルが低いため、対応できない住宅会社が多く、義務化すると業界が立ち行かなくなるということのようです。結局、損をするのは、住まいづくりの知識がない消費者なんですよね。

そもそも、日本は省エネという観点からしか基準はありませんが、米国や欧州では、居住者の健康という観点からも基準が定められています。「最低室温規定」といって、冬に寝る前に暖房を切っても翌朝一定以下の温度まで下がらないような断熱性能が要求されています。例えば米国の北東部では、18度以下にならない性能を要求している州が多くなっています。家が寒いことが国民の健康に悪いというのを国が明確にしているのです。日本は、健康という観点で国が訴求していないので、それが高性能な住まいの普及を妨げている一因でもあります。

先ほど日本の新築住宅で省エネ基準を満たしているのが5割程度とお話しましたが、それは新築の話です。既存住宅も含めた全体でみると、日本の住宅のおおよそ94%は、現在の省エネ基準の性能を満たしておらず、無断熱の住宅も溢れています。現在の日本の省エネ基準は、暖房を寝る前に切って、翌朝9度以下にならないレベルの性能です。9割以上の住宅は、その性能レベルですら確保できていないということです。米国の基準と比較するといかに日本の住宅が危ういかおわかりいただけると思います。

今後やっていきたいことはありますか?

住まいづくりのサポート自体は日本全国で行っているのですが、特に横浜エリアを中心にできるだけ広いエリアで情報発信して、日本全体の住宅の性能向上に貢献していけるようなりたいですね。

また、現在は高気密・高断熱住宅に住もうと思うと、注文住宅を建てるしか選択肢がない状況です。分譲住宅や賃貸住宅の性能向上も必要だと思っています。特に賃貸アパート等を建てる時のお手伝いもできたらと思っています。これから空き家率がますます上がってくるので、賃貸住宅の経営は難しい面がありますが、高気密・高断熱化することで、差別化になり、空室リスクが下げられると思います。

それから、注文住宅を新築できない層の方々に快適な住宅を提供する方法がないかを考えています。その一つが既存住宅の気密・断熱性能の調査です。今のお住まいの気密・断熱性能を測定して、断熱リフォームを行った場合に、どれくらい快適になり、冷暖房の光熱費をどれくらい削減できるかのシミュレーションまで行います。本来調査費用15万円のところ、2019年5月末までの申し込みの場合は、3万円(税別)で行っています。寒いお住まいで我慢の暮らしをしていて、断熱リフォームをお考えの方は、ぜひ試してみてください!

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また、「結露のない健康・快適な住まいづくり」に関する定期セミナーや無料相談も行っています。住まいづくりや断熱リフォームをお考えの方はぜひご参加いただければと思います。

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