皆さんは「クワイエットアワー」という言葉をご存知でしょうか? クワイエットアワーとは、商業施設などで特定の曜日・時間帯に音や光を緩和し、感覚過敏のある方が安心して買い物などができる環境のことを言います。
イギリスやオーストラリアなどでこの行いはすでに浸透しているそうですが、日本ではまだまだ馴染みが薄く、先日、「かわさきパラムーブメント」のレガシーのひとつとして、商業施設では日本初となるクワイエットアワーがイオンスタイル新百合ヶ丘1階食料品・日用品売り場で実施されました。
目次
どんなことが実施されたの?
・ 店内の照明の明るさを通常時より2~5割程度緩和
・ 店内BGMのカット(緊急時を除く)や、レジスキャンの音量の若干の緩和
・ カームダウンエリア(感情やストレスが高まった時に落ち着くための場所)の設置 等
参加者は?
感覚過敏当事者(子ども・大人)や家族、近隣住民。クワイエットアワー実施時に買い物をしてもらい、その結果を関係者間で検証・共有し、次回以降の展開に繋げるのが目的。
通常時より照明の明るさを緩和した店内。音は、レジスキャンの音量を絞り、館内放送やお店の呼び込みをなくしたことで、耳に飛び込んでくる音がなくなった印象でした。
自動販売機の明かりも緩和。左の自動販売機は完全に光を落としています。
エレベーター前のモニターでは通常、映画のプロモーション映像が流れていますが、クワイエットアワーではOFFの状態でした。
感情やストレスが高まった時に落ち着くための場所=カームダウンエリアも設置。
今回、行われたクワイエットアワーに協力をされた明治大学理工学部・上野佳奈子教授にお話をうかがいました。
「去年の末に日本発達障害ネットワーク(発達障害関係の全国および地方の障害者団体や親の会、学会・研究会、職能団体などを含めた幅広いネットワーク)で買い物の困りごとに関するアンケートを実施したところ、感覚過敏の特性を持つ発達障害の方々は、店内の音や照明が耐え難いことがあるため、買い物に行くことを控える方も多いということが示されました。
今回のクワイエットアワーの開催にあたっては、そのデータを背景に当事者団体の方々からさらに詳しくお話を聞いて実施内容を決めました。照明は、ただ全体を暗くするだけでなく、まぶしいスポット照明や小型液晶画面を消し、音は、BGMを消すだけでなくレジの音のボリュームを下げるなど、お店側が様々な配慮をしてくださいました。
当事者の方々からは“楽でありがたいです”という声をいただいたので、こういった取り組みが日本でも当たり前になるといいなと思います」
取材時はマサノヨメの2歳の娘・マサノムスメも一緒だったのですが、普段の買い物時に比べ、不思議とグズることなく落ち着いた様子でした。大人よりも感受性が豊かな子どもにとっても、もしかしたらクワイエットアワーは快適な空間なのかもしれません。
しかしながら、スポット照明を消したことで商品の説明が読みづらいなどの問題も発生したそうで、課題を残したのも事実です。様々な問題が解決し、日本でもできるだけ早くクワイエットアワーが浸透することを期待しています。