〇〇やってみたシリーズ新百合ヶ丘から10分の場所で五右衛門風呂に入ってみた

非常事態宣言が解除され、街に人の姿が戻り始めた6月某日、ある情報がSNSに流れてきました。
それは“川崎市黒川青少年野外活動センターに五右衛門風呂が完成”というニュース。

川崎市黒川青少年野外活動センターのHPはこちら

五右衛門風呂に入れるの!? しかも新百合ヶ丘駅から10分の場所で!?

驚きつつも幼少時代に想いを馳せる私・ねこさとP。
というのも私、海と山に囲まれた超田舎の出身でして(しんゆりの情報サイトを手掛けておきながら、しんゆり出身ではないという。ほんとスミマセン。でも、だからこそ気付く街の魅力ってあるよね!)、小さい頃、祖父母の家が五右衛門風呂だったなとか、母屋から一旦外に出たところにお風呂とトイレがあったなとか、夜とか怖かったわ~、なんて関係ないことも含めて色々思い出し、とても懐かしい気持ちに。

ちなみに五右衛門風呂を簡単に説明すると、かまどの上に釜を乗せ、釜の底の浮き蓋を踏み沈めて入浴するお風呂のこと。
五右衛門風呂という名称は、豊臣秀吉が石川五右衛門をかまゆでの刑にしたとう俗説から生まれたそうです。

そうだ。五右衛門風呂に入ろう!

これまでも“情報のその先”をお伝えすることで、区民の皆さんに麻生区の魅力をもっと伝えたいと思いながら取材を行ってきた我が編集部。
そこで迷わず出た結論が、「そうだ。五右衛門風呂に入ろう!」でした。

そんな時、SNSで男性ふたりの五右衛門風呂に関するやりとりを発見した私は、早速コンタクトを取ることに。

そのおふたりとは、SDGsアクセラレーターの今井雄也さん(通称・麻生区のSDGsおじさん)と、パン屋「ミツバチ」店主の松倉圭吾さん(通称・柿生のジャムおじさん)。

SDGsに関する記事はこちら

①ミツバチに関する記事はこちら
②ミツバチに関する記事はこちら

おふたりが五右衛門風呂体験を快諾してくださったため、長かった梅雨が明けた8月上旬、取材を行うことに決定しました!

まずは火起こしから


センター入り口の坂を上りきった駐車場の案内板にはロコっち新百合ヶ丘の名が。旅館の歓迎ボードっぽくて、ちょっと嬉しい。



まるで山奥にあるキャンプ場のような雰囲気。緑が多いせいか空気もひんやりしており、しんゆりから車で10分とは思えない景色です。

今回、案内をしてくださったのは、センターに務める“かぼちゃん”という女性。
ちなみにこちらのセンターでは、参加者が職員の方とより仲良くなるために、ニックネームで呼ぶことになっています。
私たちも遠慮なく「かぼちゃん」と呼ばせていただき、彼女に色々と教えていただきながら作業を進めました。


お風呂が完成するまでの一連の流れを真剣に聞く一同。
ちなみにかぼちゃんは、もともとアウトドアやDIYが好きだったそうですが、まさか五右衛門風呂を手作りするとは思ってもみなかったそう。


こちらが火起こしに使う道具。メタルマッチ(金属同士が擦れた時に出る火花を使って火を起こすアイテム)、麻紐、細い薪、紙パッキンと、これに新聞紙をプラス。ちなみに紙パッキンは、お中元のクッション材に使われていたもの。徹底的にエコです。


最初にかぼちゃんがお手本を。薪などを手際良く配置し、あっという間に火を着けました。


続いてメンバーが挑戦。まずは大きな杉板をナイフで細かく割っていく“バトニング”。バトンとなるものは何でも良いそうですが、今回は近くに転がっていた桜の木を使用しました。こういった“自然の素材を利用して行う、自然の中で生きる行為や技術”のことをブッシュクラフトと言うそうです。


次に火種になる麻紐をほぐします。上手くフワフワになったのが嬉しくて、ハムスターを手に乗せているかのように大事に扱ってしまう私。ただの麻紐なのに。


次はフワフワの麻紐にメタルマッチで火を着ける練習。今井さんも松倉さんもメタルマッチを使うのは初めてでしたが、すぐにコツを掴んでいました。


バトニングで細かく割った薪の表面を薄く削っていく“フェザースティック”も体験。実は取材日の前日に左足の小指を負傷してしまった今井さん。お子さんが時折、足を踏みに来てしまい(子どもあるある)、そのたびに「やめて~!」と悶絶。


足を庇いながらも作り終えたフェザースティック。美しい仕上がりです。一方の松倉さんも器用な手つきで作業をこなしていました。さすがパン屋さん!

実際にお風呂を沸かしてみる

そして、いよいよお風呂を沸かす作業へ。
先ほどかぼちゃんに教わった手順で薪などをかまどに設置し、火を着けるふたり。
今回はお風呂をふたつ借りたので、競争しながら(笑)作業を行いました。


ここでも足を庇いながらの作業。心配した編集部が「無理せず~」と声を掛けても「全然痛くないっすよ」と強がる今井さん。


竹でできた火吹き棒を使い、火力を調整する松倉さん。その姿はまるで孤高の陶芸家。それにしても昔の人はお風呂も食事も毎日火起こしから始めていたかと思うと、尊敬しかありません。


火吹き棒で「鬼滅の刃」の禰豆子を真似するふたり。かわい……くはないですね。



ある程度、火力が強くなったところで大きな薪を投入します。こちらの薪も、もちろんセンターでとれたもの。
そして薪が保管してある場所にはSDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」のアイコンが!


どんどん灰になっていく薪をかまどから取り出し、温度を調整するかぼちゃん。その姿がめちゃくちゃカッコいい!


灰になった薪は高熱のため、しばらく燃え続けるそうです。それにしてもこの写真、火の粉まで綺麗に写っていて、いい写真だわ~。



今井さん、松倉さんのふたりが着替えをしている間に、ロコっちメンバーが水を投入します。
底に沈める板もセンターの皆さんの手作り。
ちなみに、釜全体が熱くて触れないのではないかと思いがちですが、水温で釜が冷やされるため、釜の側面は水温以上にはならないそう。グラグラと沸かさない限り熱くありません。



「取材日までにイマザイルとマツザイルを目指す」と息巻いていたふたりでしたが、どうやら間に合わなかったようで、思い思いのTシャツを着て入浴することに。
いざ入ってみると大人の男性には少し窮屈に見えますが、そのサイズ感が逆に落ち着きます。
昔の人は小柄だったため、このサイズで充分だったのでしょうね。


薪を割るところから始まり、火を起こし、湯加減を調整し、やっと入浴できた時の喜びたるや!
見ているこちらまで気持ち良くなってきました。

ちなみに五右衛門風呂は、薪の残り火やお風呂自体の余熱でお湯が冷めにくいため、冬でも心地良く入れるそうです。

すっかりリラックスしたふたりに感想を聞くと、「自然の中で入るお風呂、たまんないですね。下から木の香りが漂ってくるのもいい!」と今井さん。
松倉さんは「自分で作ったお湯なので、さらに気持ちいいですね。できればスッポンポンで入りたい(笑)」とのことでした。


最後に、かぼちゃんも一緒に記念撮影。
川崎市黒川青少年野外活動センターの皆さま。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました!

まとめ

薪割りから入浴まで約1時間半。
ボタンひとつで好きな時に、好きな湯加減で入れる現代のお風呂に比べ、五右衛門風呂はとても時間が掛かります。
ですが、自分の頭で考えて工夫をしたり、苦労をすることが少なくなった現代だからこそ、子ども達に薦めたい体験だと思いました。

こちらのセンターでは五右衛門風呂のほかに、流しそうめんやドラム缶ピザ、餅つきなど様々なプログラムが用意されています。
学校や街の行事が軒並み中止となった今、家族やお友達など少人数で楽しめる野外プログラムがたくさんありますので、ぜひ一度体験して、素敵な思い出を持ち帰っていただければと思います。

オススメの新プログラム! 水出しコーヒーはいかが?

五右衛門風呂を楽しんだあと、所長の野口さんから「いいものあげるよ」との言葉が。
それは、この日に水出ししたばかりのコーヒーでした。

なんとこのコーヒー、手作りのコーヒー器で入れたものなのです。
水だけでじっくり時間を掛けて抽出するため、苦味が全くなく、子どもでもゴクゴク飲めるほどの爽やかさ。
この水出しコーヒー器作りも体験できるそうなので、気になる方はセンターに問い合わせを。


こちらが手作りの水出しコーヒー器。体験プログラムでは板をカットするところから始まり、やすりかけ、組み立てまで全て自分で行います。
自作の道具を使ってじっくり抽出したコーヒーを楽しむ…。贅沢の極みですね。


こちらがご馳走になった水出しコーヒー。すっきりと飲みやすいので何杯でもいけちゃいそうでした。
こんなに美味しいコーヒーが家で毎日飲めると嬉しい!


松倉さんがお店の人気商品・カヌレを持参してくださったのですが、濃厚なカヌレとコーヒーの爽やかさが絶妙にマッチしていました。
そして、下に敷いている木のトレイ、とってもオシャレじゃないですか?
実はこれもセンターの廃材でできていて、購入も可能ですよ。

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