センター北駅から徒歩3分のところにある「都筑亭」。
ランチタイムにスパゲッティや生姜焼き定食などを提供する、ログハウス調の飲食店です。
表に掲げられた「日本ナポリタン学会認定1号店」というインパクトのあるワードに興味をひかれた方も多いのではないでしょうか?
ホームページはなくSNSも決して積極的でない同店ですが、アド街ック天国をはじめメディアでたびたび登場するセンター北の人気店「都筑亭」をご紹介します。
目次
今年で創業25年目、ナポリタンのはじまり
都筑亭がオープンしたのは、ノースポートモールができる8年前の1998年。マスターの中島さんは横浜国際ホテルなどで修行を積み、地元である都筑区でお店を開きました。
今でこそ道路を挟んだところに巨大なノースポートモールがそびえ立っていますが、当時はまだ盛り土だったといいます。
お店がオープンする前から看板メニューに決めていたという、ナポリタン。
「ナポリタンがじわじわブームになってきたと感じるのは15年前頃かなぁ。当時(1998年)はまだナポリタンを食べられるお店がなかったから、ナポリタンを看板メニューにしたくて。自分が東京の調理専門学校時代に通っていた喫茶店のナポリタンの味が忘れられず、それを再現したかった」とマスター。
都筑亭のナポリタンは、マスターの青春の味だったのですね。早速作っていただきました。
都筑亭のナポリタンのこだわり
注文が入るとまず、麺茹でがスタート。
ナポリタン界でよくある麺の茹で置きは取り入れず、注文が入ってから麺を茹でる「茹でたて」にこだわっています。これも思い出のナポリタンを再現してのこと。
そしてここからが都筑亭の真骨頂、中華鍋の登場です!
ナポリタンに中華鍋を使う理由は、熱伝率が良い上にホテルパンに比べて軽いこと。また、軽さでは秀逸のアルミ素材だと、麺がくっついてしまうので不向き。使い終わった後は鍋を空焼きするなど手入れも必要になってきますが、都筑亭では創業当時から中華鍋を愛用しています。
ソースに麺を絡ませながら高火力で水分を飛ばし、香ばしく焼き付けていくのがナポリタンを美味しく作る秘訣です。 時折炎をあげることも…!
ナポリタン実食
今回いただいたナポリタンは、同店の看板メニューになっている「びっくりベーコンのナポリタン」。
ナポリタンの上に厚切りのベーコン120gがどかーんと乗っかっていて、見た目のインパクトも抜群ですね。ナイフでベーコンを切り分けながら食べ進めていきます。
ナポリタンの具は、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームと王道の面々。
もっちりでもソフトでもない茹でたての麺に、甘酸っぱくクリーミーなナポリタンソースが絡む至福のおいしさ。まるで老舗喫茶店のスパゲッティのような、どこか懐かしい味わいです。
ちなみに、アド街の番組の中でマスターは「ひと口目から粉チーズをかけるのはあまり好ましくない」とジョーク混じりにおっしゃっていましたね。笑
渾身のナポリタンですから、まず一口目は、ぜひオリジナルのまま頬張ってみてほしいと思います。
二口目から、お好みで粉チーズ&タバスコをちょい足ししてみて。
びっくりベーコンナポリタン誕生のきっかけ
同店のナポリタンメニューは定番の「横浜ナポリタン」と「びっくりベーコンのナポリタン」2種。前者はお店が開業した時からずっとある一方、「びっくりベーコンのナポリタン」が誕生したのは、2013年のこと。2011年、縁あって日本ナポリタン学会第1号店に認定されたその2年後、同協会から全国各地のナポリタンが集う「ナポリタンスタジアム」に出店してみないか?と声がかかります。
「ちょうど嫁をガンで亡くした頃でした。嫁と立ち上げてやってきた店だったから、自分はもうお店に立つことはできない、と打ちひしがれていたんです。そんな時、内々でやるつもりだった小さな葬儀場に何百人という方々が参列してくれたんですね。それを娘が見て「お父ちゃん、お店続けなきゃダメだよ。私がんばるからやろうよ」と言ってくれたんです。でもすぐは無理だから一年間休ませてくれって。それでお店を開けたり閉めたりしていたんです。そんな時です、横浜赤レンガ倉庫で開催されるナポリタンスタジアムに出店しないかという声がかかったのは。これは、嫁が仕事しろって怒ってるんだな、と思いました。それでお引き受けすることにしました。」
カゴメ主催の全国各地のナポリタンが集う「ナポリタンスタジアム」。出店が決まってから他店のナポリタンのメニューをリサーチしてみると…中島さんは焦ったと言います。
「他の店はハンバーグが乗ってたり、ホワイトソースがかかってたり、そんなのアリなんですか?!って思わず主催のカゴメさんに申し出ました。笑 それで誕生したのがこの、びっくりベーコンのナポリタン」
当日はキッチンカーを借り、寸胴鍋で麺を茹で、中華鍋では到底間に合わないので焼きそばのように鉄板とへらで調理。厚切りのベーコンを乗せたナポリタンは2日間で1600食を販売したのだそう!
イベントの大盛況は、都筑亭の大きな転機となりました。奥さまから娘さんへ受け継がれた親子の二人三脚は確実に大きな一歩を踏み出すきっかけに、そしてイベント出品を機に誕生した「びっくりベーコンのナポリタン」は定番メニューとなり、今のお店の看板となったのです。
目指すのは「誰かの記憶の中のナポリタン」
今やお店の代名詞になっている都筑亭のナポリタン。原点はやはり、マスターが学生の時通った喫茶店にあると言います。
「数年前に渋谷を歩いてお店を探したのだけど、お店はもう無かったねぇ。だけど思い出の味って記憶に残りつづけて、当時を一瞬で呼び覚ましてくれる。例えば老夫婦が「昔懐かしい味ねぇ」と感じてくれるようなナポリタンを目指したい。」とマスターは語ってくださいました。
目指すのは「誰かの記憶の懐かしいナポリタン」。
やさしくどこか家庭的な都筑亭のナポリタンには、そういう思いが込められていたのですね。
きっとこれからは、センター北で食べたナポリタンとして都筑亭そのものが地元民の記憶に残り続け、いつの日かその人の「思い出の懐かしいナポリタン」になることでしょう。
店舗情報
都筑亭
住所:横浜市都筑区中川中央1丁目23−10
営業時間:11:30~14:00
定休日:火曜・水曜