【閉店】ベッカライ徳多朗がもっと好きになる。愛すべき定番のパンと「おいしいお話お料理ノート」

  • 投稿日2021.7.16
  • 更新日2021.12.10

※ベッカライ徳多朗ヨツバコ店は2021年11月8日をもって閉店しました。2021年11月14日より元石川店がリニューアルオープンします。

センター北の週末の朝。噴水広場を眺めながら、家族連れや年配のご夫婦がパンを頬張っている穏やかな景色が見られます。


土日朝7時から開店する「ベッカライ徳多朗」は、街の朝ごはん屋さんのような存在。

私もこの街に越してきた翌日、荷ほどきに追われ慌ただしい中、朝食でこちらに立ち寄りテラスでパンをいただきました。その美味しさのあまり「こんな素敵なパン屋さんがあるのだから、きっといい街に違いない!」と謎に確信しました。

まだこの街の右も左も分からない当時の私にとって、それは希望そのもの。実際に、こちらに通えば通うほど、どんどん好きになっていきました。

お店も、街も。

愛すべき定番のパンたち


その後、お店に通って色んなパンとの出会いがありました。あんぱん、クリームパン、めっちゃコーンなど、どのパンも大好きなのですが、今回は定番の中でも特にお気に入りをご紹介したいと思います。同店の副社長・徳永久美子さんにもお話を伺いましたよ!

【角食パン】

角食パン1斤 税込410円
程よい弾力があり、シンプルで飽きのこない味わいの角食パン。


耳まで美味しそうでしょう?

しっかりした耳は、トーストするとサクッと美味しいのです。一般的な角食パンに比べて砂糖を控えめにしているそうで、甘くない食事系アレンジにも合います。

冷蔵庫にある食材を乗せてあれこれどう食べようか考える時間も楽しい。「食パンが美味しいパン屋でありたい」。31年前の創業時から変わらぬ徳永さんご夫婦の思いが詰まった角食パンは、多種多様なラインナップのなかでも芯のような存在です。

【豆のカレーパン2種】

コーングリッツ・パン衣のカレーパン 各税込285円

25年以上レギュラーの座を誇っているカレーパン。ベッカライ徳多朗が美しが丘の小さなお店だった頃、「油っこくないカレーパンが食べたいわ」というお客さんとの会話から揚げないカレーパンが生まれたそうです。


フィリングは、ひよこ豆とレッドキドニーの2種の豆、煮込んで凝縮された野菜と豚ひき肉。スパイスにカルダモンを効かせた大人っぽい味わいが魅惑的なカレーパンです。

カレーフィリングをダイレクトに味わえる「コーングリッツ」と、ザクザク触感が楽しい「パン粉衣」の2種類は、甲乙つけがたい美味しさです。

【季節のデニッシュ】

サワーチェリーデニッシュ 税込360円

デニッシュを日本に広めたベーカリー「アンデルセン」、そちらの青山店で修行された徳永さんご夫婦ですから、デニッシュは今でも大切に作り続けられています。

「ケーキ屋さんには生の果物が並びますが、パン屋では果物を焼き込んで季節感を届けたい」と徳永さん。

春は苺、初夏にはチェリーや杏、夏にはルバーブやプルーン、秋冬にはブラムリーや紅玉など、心躍るような季節の果物がお目見えします。

きゅんと甘酸っぱい旬の果物に合わせるのはカスタードクリームだったり、アーモンドクリームだったり。極薄の層が重なった生地と旬の果物が織りなすデニッシュは、みずみずしいほどに季節を感じさせてくれます。

日々の「美味しく食べること」をメモ書きした「おいしいおはなしお料理ノート」

徳永さんが季節ごとに執筆・発行している「おいしいおはなしお料理ノート」というA4のかわら版があります。


旅のエピソードや幅広い食べ物のレシピが綴られているこちらのノート、執筆のきっかけは徳永さんが30歳の時、イタリアのパルミジャーノ・レッジャーノの産地を訪ねたときのことです。

チーズ職人に「おすすめのお菓子はありますか?」と聞いたところ「ここはチーズが美味しいから、お菓子はいらないんだよ」と返ってきた答えに衝撃を受けたそうです。

「誇り高い職人魂に感動しました。その時に、パンだけでなく食べ物全般に目を向けて美味しいものについて書いていこうと決意しました」と徳永さん。

それ以来、月に1度発行していた「おいしいおはなし」ですが、別の書籍のお仕事などで忙しくなったため、辞めていた時期もありました。

「去年の30周年の区切りにもう一度、見つめなおしました。私の仕事は、現場で働きながら、おいしいおはなしを書き続けること。来てくれたお客さんに感謝の気持ちを込めて」


去年の夏号から新たに発行している「おいしいおはなしお料理ノート」。

躍動感あふれる徳永さんの文章は、とても読み応えがあります。すべて下書きなしの手書き文字! デジタル活字が当たり前の今、そのお人柄が伝わるような手書きの文字に私は心を掴まれました。

そして、レシピの向こう側に見える背景がまた面白いのです。旅先のアジアの市場だったり、ヨーロッパの街角だったり、徳多朗の厨房だったり、徳永家の食卓だったり…。

すっかり徳永さんに魅了された私は、「いつか、私の故郷の美味しいうどんや餃子を食べてもらいたい」なんて想像が膨らむのでした。

明るいお店の雰囲気に「また行きたい」

行列ができて忙しい時でさえ、明るく親切な接客をしてくださる従業員のみなさんも、お店の魅力のひとつです。


こちらは、徳永さんからいただいた写真です。

「従業員は家族同然。信頼してこそ、仕事のバトンを安心して投げられる。美味しく作りたい賄いやパンにつけるジャムは、みんなと仲良くなれるとっておきのアイテムなんです」

家族に美味しいものを食べさせたい気持ちは、母心と同じですね。美味しいものを食べるって何事にも原動力になりますもの! 「また行きたいな」と思えるのは、生き生きと働いている従業員みなさんの姿が私たちの目に映っているからだと思います。

これからもこの街に愛されるベッカライでいてください

「都筑区の好きなところは、緑が多くて、野菜がおいしいところ!」そうおっしゃる徳永さん。ベッカライ徳多朗がヨツバコの1階に入ってもうすぐ10年目になろうとしています。


開店時にヨツバコからお店へのプレゼントとして植えられたオリーブの木の下で。

私のご近所友達は「このオリーブの木の下に座ってパンを食べながら一息するのが至福の時」と言っていました。地元民に愛される、わが街自慢のパン屋さんです。

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