センター南駅から徒歩4分、餃子の冷凍自販機で有名な中華料理店「龍山坊(ロンサンボー)Take Out」。
2022年4月13日、Instagramと店頭にて突然のお店じまいを公表されました。
お弁当を求めて店を訪れる人の姿や、常連さんがこなれた様子で麺をすする姿も在るような、地域に愛される町中華が消えてしまうなんて…!
ロコっち編集部でも今まで数回にわたり同店を記事で取り上げさせていただきましたが、今回閉店のお知らせを聞いて思ったのは「龍山坊さんの歴史を改めて知りたい。都筑区歴が浅い人にも知ってもらえたら」ということ。
・閉店の理由は?
・まさか、店長の体調は大丈夫なの?
など聞いてみたい事ももりだくさん。
店主山田さんにお時間をいただきお話を伺いましたので、インタビュー形式でお伝えします。
目次
オーナーから託され繋いだ25年 龍山坊の歴史
ーInstagramでの閉店のお知らせ、とてもびっくりしました…周りの反応はどうでしたか?
山田さん:Instagramでは悲しいマークをつけてくれた方も多かったです。でも今まで2019年にも1度店閉めてるからか、反応は昨日今日で今のところ薄いですかね。(取材日は発表の翌々日)
ー店内飲食のロンサンボーから「龍山坊 Take Out」に切り替わった時ですね。
また今回も「形態を変えてリニューアルオープンされるのかも」と、どこか存続の希望を持っていらっしゃる方も多いのかもしれないですね。
山田さん:いやいや、正真正銘の閉店ですね。この場所は違うお店になるだろうし、僕も他の働き口を探さなきゃ嫁さんから怒られちゃう。でも変わらず中華料理人は続けます。
ーやはり中華料理に人生をかけるおつもりなのですね。
山田さん:そんな綺麗事じゃなくて、この年で新しい事を始めるのってよっぽど気力と体力が要るでしょう?
オーナーから一緒に事業を手伝わないか?と言われたけど、自分のやれることは今までどおり中華鍋をふるうことだと思うので。
チャーハンが好きな少年がオーナーとの出会いをきっかけに料理人へ
ー中華料理人の道を志したきっかけは何かありましたか?
山田さん:小さい頃の僕は、チャーハンがこの世で1番好きな子どもでした。でも料理人になりたいという気持ちはそれほど強くなかったかな。きっかけをしいて言うなら、高校時代にこの店のオーナーと出会ったこと。同級生だった彼はあざみ野の中華料理店でバイトしてたこともあり、高校卒業後は2人で同じ調理師専門学校に入学しました。卒業後は2人揃って赤坂ツインタワーの四川料理店「狸不里(こうぷり)」に就職して、10年程そこで料理人を務めました。
ー山田さんとオーナーはずっと一心同体なんですね!
山田さん:一心同体、そうですね。笑 そして1997年、彼はセンター南に「龍山坊」を出しました。
センター南はまだ商業施設が何もないところでね、先見の目があったんだと思います。
ちなみに僕はその頃、築地本願寺の近くの中華料理店で働いてました。
課題と共に龍山坊を託される
山田さん:2011年、オーナーが「飲食とは違う事業の方に専念したい」と切り出し、僕が龍山坊を店長として引き継ぐ事になりました。でも彼は課題を置いていったんです。
「やりたいことがある。冷凍自販機で餃子を販売したい」って。
ーそれは難題ですね! 初めて聞いた時、どう思いましたか?
山田さん:直感で面白そうだなと思いました。24時間販売できるのは画期的だし、誰もやったことない事やってみたいって。
でも、今でこそ冷凍自販機が流行ってきたけど、当時はゼロからのスタートですよ。色々調べた結果、アイスの自販機を改良したら出来るんじゃないかって。富士電機が作ってるアイスの自販機をベースにサイズを変えてもらって、知り合いの看板屋にカッティングとデザインを頼みました。
ーゼロから模索して作り上げたのは大変だったと思います。世界初の冷凍餃子自販機、周りの反応はどうでした?
山田さん:1号機はお店の前に設置したんですが、通行人の反応は「冷凍餃子1,000円、高けえな!」って。
最初は全然売れなかったけど、半年くらい経って1ヶ月で100~200個くらい売れるようになりました。横浜のメディア「はまれぽ」さんに取り上げていただいて、そこからテレビ局の取材が数回ありました。ゴールデンタイムに流れた後日の売り上げは桁が違ってびっくりですよ。テレビの力はすごい…。
時代の先駆け、だったはずが…
ー冷凍餃子の自販機をいち早く取り入れたり、コロナ禍前にテイクアウト専門店に切り替えたりと、ロンサンボーさんは先見の目がおありなんですね。時代を先読みされていらっしゃる!
山田さん:ははは!そうかも知れない。だけど、逆にそれが低迷を引き起こしたとも言えます。
テイクアウトも冷凍餃子自販機も他店と差別化したくて始めた事が、今はこんな感じでもう埋もれちゃったから。
うちみたいな小さな個人店は、コロナ禍でお客さんが減っちゃうと、協力金なしには持ち堪えられない。コロナ禍で立ちゆかなくなった、というのが閉店の理由です。
特にセンター南という土地は、ライバルに大手チェーン店が多いから難しいです。特に最近は難しくなってしまった。地価の値上がりしかり、個人店が入るのは今後一層難しくなるんじゃないかな。
ーうぅ…。切実なお話です。住みたい街にランクインしたり街の価値が上がる反面、個人店が参入しづらくなるのは、非常に残念なことですね。
今までは珍しかった餃子の冷凍自販機と中華のテイクアウトもまさかコロナ禍の需要で乱立し埋もれてしまうなんて。
また、閉店の理由に「店主の身体がどこか悪いのではないか?」という心配もあったのですが…
山田さん:それは、大丈夫です!この通り体はすこぶる元気ですので!笑
ーそれを聞いて少し安心しました。
歴史をまとめてみました
1997年 センター南に龍山坊オープン
2011年 オーナーから山田さんへ店長交代
2013年 餃子の冷凍自販機が設置
2019年 一旦閉店の後「龍山坊Take Out」にリニューアルオープン
2022年 5月閉店予定
ー最後に、地域住民に向けてメッセージをお願いします。
山田さん:東急もなくて原っぱだった25年前からやっているから、この地域では古い方だと思います。「20年ぶりに来ました」と言ってくれるお客さんがいらっしゃると、「ああ、この地で働けて良かったな」としみじみ感じます。
また、餃子を買うと付いてくる「餃子券」のシールが貯まっている方は、閉店までに交換をお忘れないようにお願いします。閉店してから、「持っていけば良かった!」って後悔されるとこちらも悲しいので。笑
ー立つ鳥跡をを濁さずですかね。地域のみなさん餃子券は閉店前に引き換えお願いしますね!
山田店長、お忙しい中インタビューに応じていただきありがとうございました。
お店は5月31日まで営業
最後に、お店のスタッフ麻里奈さんも一緒に。
お店の看板娘・麻里奈さんの気さくな接客は「またお店に行きたい」と思える魅力のひとつでした。
山田さん:「麻里奈はよくやってくれた。接客やお店のインスタ関係全部引き受けてやってくれた。
実は麻里奈はオーナーの姪っ子なんです。赤ちゃんの頃から知ってるから娘みたいなもんかな」
麻里奈さんと山田さんの掛け合いが巧妙だなぁと思っていたら、何とオーナーの姪っ子さんでしたか!
元美大生の麻里奈さんが書いたイラスト。お店に和やかさを添えてくれていました。
山田店長とオーナーと、紆余曲折しながら二人三脚で25年繋いできた「龍山坊」。
お話を聞いていると、逆らうことが出来ない時代の流れを感じ、切なく、もどかしい気持ちが込み上げてきました。
龍山坊に思い出のある方も、まだ行ったことのない方も、5月末の閉店までに是非一度足を運んでいただければと思います。
店舗情報
龍山坊 Take Out!
住所:横浜市都筑区茅ケ崎中央13-2 宮下ビル 1F
電話番号:045-941-0860
営業時間:11:00~21:00
定休日:木曜
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