たまプラーザを拠点に働く女性にインタビュー⑫ピアニスト 広瀬 治代さん

たまプラーザ(神奈川県)を拠点に働く女性のインタビュー記事です。

彼女たちが、いろいろな立場や環境のなかでいかにしてチャンスをつかみ、キャリアを築いてきたのか、副業や複業、起業を考えている人、進路に悩む学生のみなさん、社会との接点を持ちたいと考えている人、すべての“働く人”のヒントになることを願っています。

プロフィール

たまプラーザあざみ野 ピアノ&リトミック教室♪SmileMusic♪主催の広瀬 治代さん

上野学園大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒。
*横浜市在住。ピアニスト。一児(成人)の母

講師歴31年。延べ指導生徒数約400名(0歳〜85歳)
5音大卒業生による皇居内桃華学堂にて美智子様主宰演奏会にフルート奏者の伴奏として出演。

<技能・資格>

中学高等学校音楽第一種教員免許
NPO法人こども教育センターリトミック講師
プリトーン(ピアノとリトミックと英語が同時に学べる)認定講師
フィギャーノート(障害のある方の為に作られた色音符)インストラクター

<表彰>

NPO法人協同労働協会OICHI第11回ビジネスアワード「教えない音楽教室」グランプリ受賞
ピアノ&リトミック教室♪SmileMusic♪ HP
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ピアノとの出会い

藤戸 広瀬さんのご経歴を簡単に教えてください。

広瀬さん 東京生まれの埼玉県越谷市出身です。上野学園高等学校音楽科から上野学園大学音楽学部ピアノ専攻に進学し、大学卒業後は自宅とヤマハ音楽教室でピアノを教えてきました。

藤戸 30年以上ピアノを教えてきているのですね。ピアノとの出会いを教えてください。

広瀬さん 5歳ぐらいの時に、デパートで綺麗なドレスを着てピアノを弾いているお姉さんを見て、「私もピアノを弾きたい」と言ったことで音楽好きの両親が習うことを後押ししてくれました。そのときに「大きいピアノで弾きたい」と何気なく言ったようで、グランドピアノを買ってくれました。

藤戸 最初からグランドピアノというのは凄いですね。

広瀬さん 実はそこには父母の目論みがあって、当時住んでいた家の裏に離れのような部屋がありました。そこで母が書道教室を開いていたのですが、そこにグランドピアノを置いてその部屋を貸したかったようなのです。私が習いたいと言ったタイミングと父母が場所を貸したいと考えていたタイミングが合致したみたいで、ピアノが続くかどうかわからないけど、これは運命かもしれないから、ともかく場所を貸してやってみようとなったようです。それで貸すのであればアップライトよりグラウンドピアノの方がいいだろうとの判断だったようです。ヤマハのピアノを買ったのですが、楽器店の方が貸部屋にするのであればここのスペースをお貸しくださいとなって、そこにいらした先生にずっと習ってきました。

藤戸 いろいろなことがピタっと合ったのですね。長く続けてこられた秘訣は何ですか?

広瀬さん 自宅でピアノ教室をやっているので、中学生になって部活で疲れて帰ってきても先生が待っているので休むことができなかったのです。レッスンが嫌だったときもありますが、それでも続けられたのは自宅に帰ると先生が待っていることが大きかったと思います。

藤戸 環境に助けられたということですね。

広瀬さん そうですね。良い意味でさぼれませんでした。

藤戸 高校から音楽の道に進まれたのは、音楽家になろうと思ったからですか?

広瀬さん 中学校の音楽の先生になりたかったからです。高校受験の時に公立と私立の普通科と上野学園を受験していたのですが、上野学園に進学を決めたのは音楽の先生を目指すのであれば早く専門的に勉強したほうがいいと思ったからです。

藤戸 中学校の音楽の先生を目指すきっかけになることがあったのですか?

広瀬さん そうですね、小学校の音楽の時の先生がとても楽しく教えてくれる先生で、その先生に憧れて音楽の先生になりたいと思うようになりました。

藤戸 そうだったのですね。大学を卒業後、中学校の音楽の先生にはならなかったのは何かあったのでしょうか。

広瀬さん 大学生3年生で教育実習にいったのですが、実際に自分が教える側になったことで初めて自分の求めていたかかわり方と違うと感じてしまったのです。それをきっかけにあらためて将来について考えるようになりました。

ピアノの先生になった経緯を教えてください

広瀬さん 自宅で習っていた先生があるとき、「こうやって教えるのよ」と言って先生の手書きのレッスンノートを見せてくれました。そこには生徒さん一人一人を詳しく分析した情報が記されていました。先生がノートを書いていることをそのときに初めて知ったのですが、プライドを持って子どもたちをしっかりと見ていることを知った時に、先生のようになりたいと思いました。

藤戸 素晴らしい師匠に出会ったのですね。

広瀬さん そうですね。先生のノートを見たことで自分も先生のように生徒さんの成長に関わっていきたいと思いました。先生が辞めるときにそのまま生徒さんを引き継いだのですが、そのときに先生の大事なノートも引き継ぎました。今でも時々見返しますが、時代が変わっても大事なことは変わらないことにも気づかされます。大学卒業後は自宅で教えるようになり、ヤマハさんからも声をかけていただき銀座や渋谷のヤマハでも教えるようになりました。

リトミックとの出会い

藤戸 先生のノートがきっかけで自分の進みたい道が見つかったのですね。そこからはピアノとリトミックの講師として活動されてきたのですか?

広瀬さん リトミックは最近です。結婚して夫の仕事の関係で1年ほどピアノを教えることを辞めて派遣で仕事をしていました。子どもが3歳になった頃に、ヤマハでミュージックコーディネーター(生徒募集・講師管理・生徒管理・イベントなど担う)を半年経験してピアノ講師に戻りました。

子どもが小学3年生になって落ち着いてきた頃には自宅でも教えるようになりました。

コロナの少し前に義父母と同居することになり、自宅でのピアノ教室を続けることが難しくなったためヤマハだけで教えていました。ヤマハもコロナで先行きが見通せなくなったことと任期満了が重なって退職しました。

藤戸 リトミックとの出会いはその頃なのですか?

広瀬さん そうですね。コロナになってこれからどうしようかと考えているときにYouTubeでピアノの先生がリトミックをやっているのを見て、リトミックは人間形成や心の成長と緩和に役立ち生きる力を育む音楽教育の一貫であることを知りました。

ちょうど高1の息子がコロナ休講中に突然自律神経失調症になり、より心身の成長に興味を持ちました。また、ピアノの指導は上手になることのテクニックばかりではないと考えていた頃でピタッとはまった感じでした。リトミックをしっかり学んでピアノとリトミックを関連付けて、今までできなかった生きる力を育む音楽教室を作りたいと思い資格を取ることを決意しました。

藤戸 ピアノとの出会いに続いて二度目の運命の出会いですね。リトミックはどのような人たちに教えているのです?

広瀬さん 小学校に上がる前までの0歳から6歳までの小さなお子さんです。ピアノを弾くためには協調性も必要ですし、探求心、持続力、根気強さや楽譜を読む力も必要になります。ピアノは楽譜を読むだけでもいろんな要素があって勉強と同じなのです。小さなお子さんでもピアノを弾く前にリトミックでその力を育むことができます。

お子さん一人一人その時々で吸収することが違うため、成長が行ったり来たりすることもありますが、少し時間を置いて見ると心身の成長を実感できるはずです。またリトミックを習うと、自信や探求心が自然につくため、音楽以外の事にも積極的になり、算数・英語・理科・体育などの科目にも結び付き相乗効果を生みます。例えば算数に自信がなく手を付けなかったお子さんが、リトミックやピアノが出来たことで、やってみよう!と一歩踏み出すことが出来ました。自らの力で出来たことは本当に大きな一歩です。

藤戸 じっと座っていられない小さなお子さんは多いと思いますが、リトミックでお子さんの興味関心のあるやり方で集中力などの力を身につけていくことができるのですね。

広瀬さん そうですね。リトミックもピアノも一人だけでするのではなく、グループですることもメリットで人と繋がることで生まれることがたくさんあります。独自のメソッドを考えてグループレッスンで人間形成に繋げていきたいと考えています。

音楽(ピアノやリトミック)を教える醍醐味はどこですか?

広瀬さん 私が子どもたちを質問攻めにするため、一生懸命に考えて答えたときの子どもの顔を見たときや人の成長が見られるときですね。中学生くらいになるとお母さんにも話をしないプライベートな話を信頼して話をしてくれます。

また、人生の大先輩の大人の生徒さんは、アクティブで一生懸命に練習してきて私がエネルギーをいただいています。生徒さん一人一人の成長がみられる仕事はなかなかないと思います。音楽を通して人との繋がりと成長を味わえることと、上手に綺麗に演奏できることよりそこを醍醐味と考えています。

今後の活動について教えてください

広瀬さん 生徒さんと保護者がコミュニケーションを取ることを大事にして、生徒さん自らピアノを弾きたいと思ったり、レッスンに行きたい思えるような教室を作っていきたいです。

小さなお子さんたちには、保護者のみなさんと一緒にレッスンを作っていきたいと思っています。地域課題として掲げている「ママたちの育児負担」も少しでも力になればと思っています。またシニアの方に向けたレッスンや障がいのあるお子さんに向けてのリトミックやピアノのレッスンもやっていきたいと思っています。

最後にたまプラーザがどんな街になるといいですか?

広瀬さん 音楽の街にしたいです。青葉区にはたくさんの音楽家がいらっしゃいます。ピアノに限らず楽団員の方やソリスト、声楽家、楽器をされている方がたくさんいらっしゃいますので、様々のジャンルの音楽活動家の方々と繋がってコミュニティーを作ってみたいと思っています。

それからもう一つが「駅ピアノ」を置くことです。この近くでは最近、中山駅に駅ピアノが置かれました。ピアノを置くまでに時間はかかったようですが、置かれてみると利用者が予想以上に多いそうです。騒音や維持に関して賛否両論あると思いますが、街に音が流れていることはとても素敵ですし、音楽がもっと身近に感じられる街になるといいなと思います。