家庭菜園からサステナブルな農園へ。小さな直売所をオープン「吉浜農園」

  • 投稿日2021.11.3
  • 更新日2022.6.23

横浜市の農業専用区域に指定されている都筑区東方町。

時折軽トラックが行き交い、のどかな風景が広がるこのエリアに、2021年2月小さな直売所がオープンしました。

家庭菜園から吉浜農園の誕生

雲一つない秋晴れの10月下旬、東方町の「吉浜農園」を訪ねました。

横浜テニスアカデミーから大熊川沿いに少し北に進んだあたりに、目印の赤いパラソルが立っています。

吉浜農園の直売所を管理しているのは、田中千恵さんです。

吉浜農園は、収穫した農産物をJAや他店に卸さず、こちに足を運んでくれたお客さんにのみ販売しています。「あくまでも家庭菜園なんです」という田中さん。

パラソルの下には、今旬のみかんやサツマイモ、新ショウガ、唐辛子などが並んでいました。

田中さんは、2021年2月、お祖父さまが家庭菜園として活用していた畑を引き継ぎ、園長になりました。「吉浜家は女系で名字を継ぐ人がいないので、名前だけでも残したい」という田中さんの思いもあり、「吉浜農園」と命名。

現在はお祖父さまも畑仕事に精を出しながら、実のお孫さんである田中さんを「千恵ちゃん」と呼び、畑の中でコミュニケーションを取ります。

畑は、こぼれ種から育った季節の花や数種類のハーブ、野菜が混在して栽培されている「ポタジェ農園」。 花を野菜と一緒に植えることで、受粉を手伝ってくれるミツバチやチョウが集まってくる。


自然に寄り添った栽培方法を模索中

小さな頃は畑が遊び場だったという田中さん。大人になって外で働き、結婚して主婦になった後、お祖父さまの畑を手伝うようになったのは「従来の当たり前の農業」に疑問をもったことがきっかけです。一般的ではあるものの、消毒液を使った栽培方法を目の当たりにして「人間が植物をコントロールしすぎるのも環境によくないのでは」という葛藤がありました。

現在、離れも含めて合計1000坪程の畑にお祖父さまと一緒に野菜を作っている田中さん。その中でも特別な一区画に力を入れています。

「この区画はまだ試験的なんですが、私の思うままに育てています。農薬も肥料も使わない。ただ土と植物の力を信じるのみなんです」

こちらで栽培しているのは、ビーツやアスパラ、人参、ニンニクなど。少量ずつ時期をずらしながら種を撒きます。

この土で育てた野菜は、素朴で野菜本来の味がするのだそうです。

収穫が楽しみですね!

特別にみかん畑に案内してもらいました

「ちょうど今が旬」ということで、直売所の畑から歩いて7分ほどの離れにある400坪程のみかん畑に特別に案内してもらいました。

坂を昇る途中では、富士山も望むことができてちょっと感動。

晴天の日には西に富士山が! みかん畑に向かう坂にて撮影

高台にあり、日差しが燦々と降り注ぐ気持ちのいい場所にみかん畑があります。

訪れたのは10月下旬、ちょうどみかんが旬を迎える時で、鈴なりに実っていました。

果実をたわわにぶら下げて、ちょっと重たそうなくらい。

こちらのもぎたてみかん、私もいただきました。味が濃く果汁が弾けるようなみかんでしたよ!

みかんの時期は通常10月中旬から11月下旬頃までだそうですが、直売所ではなくなり次第終了です。

農園を持続可能へ。お客さんと対話する直売所

吉浜農園のスタートと同時期に始まった直売所、こちらを開いたのも田中さんです。

「祖父は家庭菜園として農作物を作っていたので、収穫したら自分たちで消費するスタイルでした。消費しきれない分はご近所に分けたりしていましたが、それでも余った分は処分せざるを得なくて…。今思えばとても勿体なかったと思います。また、次の世代も畑を持続できるよう少しでも運営費を賄う必要もあるので、それなら直売所を作ろう!と思い切ったんです」

直売所を訪れるお客さんは、昔から馴染みのある近所の人たちが多いそうですが、若いママさんや、車で買いに来られる方もいらっしゃるとか。この日も数組のご近所さんが来店し、賑やかにおしゃべりしながら品物を選んでおられました。

「いらっしゃいませより、こんにちは!って声をかけたい。美味しい野菜と、直売所で購入する楽しさを提供できれば」と、まるでエンターテイナーな心意気にあっぱれです。

最近ではみかんは袋に入れず、ゼロウェイスト(袋無し)販売することに変更した。お客さんにも好評だそう。

直売所を初めてまだ一年目、模索しながら来年に繋げていきます。

従来当たり前だった農の概念に疑問をもち、手探りながらも少しずつ持続可能な農園へと変わっていく吉浜農園。自然に寄り添った栽培で育つ野菜も、笑顔が溢れる直売所も、田中さんの思いが込められています。今後も活躍を応援していきたいです!

 

吉浜農園

住所:横浜市都筑区東方町
駐車場:無し ※農道につき路肩に寄せて停車可。
時間・定休日は不定期のため Instagramのリールにてご案内
吉浜農園Instagramはこちら

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