横浜市都筑区民には馴染みのある「緑道」。駅からほど近い場所を通っているにも関わらず、街の喧騒から離れ自然の中に溶け込むような心落ち着く場所です。
普段何気なく通っている緑道も、「都筑区」と「住人」の思いが込められていて、実は手の込んだ整備と工夫が積み重ねられているのをご存じでしょうか。
緑道を管理している都筑区役所の都筑土木事務所で、緑道散歩がもっと楽しくなるポイントをうかがい、実際にお散歩してみました。
目次
緑道ってどんな場所?
まずは緑道の紹介をします。緑道は約30年前の港北ニュータウンの開発時に、区内の谷戸などの自然の地形を生かす「グリーンマトリックスシステム」(公園や民有地の樹林などを連結させた計画)に基づいて整備されました。
それまでの自動車優位の環境を歩行者にやさしい場所にしようと緑道と公園をつなぎ、安全な歩行者ネットワークを作ったのです。


人にやさしいだけでなく、生き物の多様性も保全される質の良い緑地になっています。また緑に雨水をしみこませる機能である、「グリーンインフラ」も整えられていて防災にそなえています。


開発にはUR都市機構が携わり、ランドエスケープデザイナー(公園や街並みなどの屋外空間をデザインする専門家)も関わって自然が美しい景観が作られました。
緑道は、北コース(中川駅前入口~のちめ不動バス停前)約4.1㎞と、南コース(早淵かなりあ公園~加賀原バス停前)約8.7㎞の2コースがあります。
コースマップはこちら
https://www.city.yokohama.lg.jp/tsuzuki/kurashi/machizukuri_kankyo/jimusho/gesuido/ryokudo-sign.files/map202412webver.pdf
横浜市都筑区ホームページ 「都筑の美しい緑道と公園を巡る健康づくりコースマップ」より
緑道は5つのエリアによってそれぞれの名称があり、親しまれています。
・ふじやとのみち 牛久保東なつみかん公園~徳生公園、山田富士公園まで
・くさぶえのみち 中川駅入口から~徳生公園まで
・せきれいのみち 早渕公園~茅ケ崎公園まで
・ささぶえのみち 都筑中央公園と鴨池公園~大原みねみち公園まで
・ゆうばえのみち 月出松公園~都田公園、川和富士公園まで


美しい景観を保つための工夫と自然と四季を楽しむための仕掛けがたくさんあるので、土木事務所で教えてもらったポイントを確かめながら歩いていきます!
御影橋近辺から緑道の楽しい仕掛けを探る
今回は「ささぶねのみち」の途中から入り、茅ヶ崎公園に向かって歩きます。区役所通りの御影橋近辺からスタート!
陽射しが強かったのですが、緑道に入ると木陰に風が通り涼しいくらいです。
緑道に一歩踏み入れると別世界。車や自転車が走っていないので安心して歩けます。自転車は押して歩くのがマナー。歩行者優先でゆったりとお散歩できます。


開発時にこだわった点は、自然を壊して人工的な都市開発をするのではなく、元々の都筑の地形を生かしたことです。谷戸に流れていた湧水も活かして設計されています。


長い緑道はトンネルを効果的に使いメリハリをつける演出を手掛けています。


石畳に模様を描く木漏れ日にも癒されながら、歩を進めます。アスファルトやコンクリートで歩道を作った方が管理しやすいのですが、自然との調和を考え、あえて石畳を多用しているそうです。


葛ヶ谷公園近くまで来ました。石のパーゴラが遺跡のような雰囲気をかもし出しています。モニュメントなども石や土や木などの自然界に存在する素材でアクセントをつけ、デザインされています。


ゆっくり景色を堪能しながら歩いてみるとわかるのですが、遠い道の先まで見えるところがほとんどありません。


実はこれも有機的な空間を作るために、あえて直線を少なくしゆるやかなカーブを描くように蛇行させているのだとか。整備の手が込んでいます。
細かい工夫はほかにも。各公園近くの車止めのポールも横浜市が標準的に使用しているものではなく、緑道では、丸みを帯びたデザイン性の高いポールに統一しているそうです。


それだけではなく、外の建物が見えないように植栽して住宅のプライバシーに配慮していたり、池の周りに柵や植栽の境界を入れずに分断されない自然な景観を作ったり、細かい設計で別世界に入ったような空間を作っていたのです。
茅ヶ崎公園に近づくとあじさいがちらほら見えてきました。


春の新緑や秋の紅葉など、季節ごとに表情が変わるのも緑道ならでは。花の香りや光の加減、静かな場所では虫や鳥の声にも癒されます。
せせらぎ整備にもモルタルなどの接着剤を使わずに生物が棲める隙間を作ったりして、動植物とともに共存できる場になっているのも魅力です。
住人の協力があってこその美しい緑道
緑道は設計の工夫だけでなく、地元の公園愛護団体による落ち葉清掃や住人との検証会があるからこそ、自然豊かな景観が保たれています。


緑道の再整備をする時は、設計の段階で必ず住人の意見を聞き、整備に生かしているそうです。
開発時よりも年々電動自転車の利用者が増え、アスファルトに舗装した方が通行しやすいのでは?という意見もありますが、自然に近い雰囲気を残してほしいとの住人の声が多く、石畳などを残しているとのことです。
再整備の後には、住人とともに散策して検証会までやっているというのが驚き。横浜市内の再整備でも稀な例で、整備の良かった点や改善点を話し合い、住人とともに緑道の歴史が作られています。
また港北ニュータウンの開発時に整備を始めたことから、緑道や歩道橋に繋がるようにバス停の位置を工夫していて、街全体が過ごしやすくなるように整備されています。
こうして土木事務所の方にお話を聞いてみると、普段何気なく通っている緑道により愛着が湧きました。
ときには緑道の演出を堪能しながら、ゆったりとお散歩を楽しんでみてはいかがでしょうか。
緑道概要
北コース:中川駅前入口~北山田駅入口(山田富士公園)~のちめ不動バス停 約4.1㎞
南コース:早淵かなりあ公園~葛ヶ谷公園(都筑ふれあいの丘入口)~加賀原バス停前
参考:都筑の美しい緑道と公園を巡る健康づくりコースマップ
https://www.city.yokohama.lg.jp/tsuzuki/kurashi/machizukuri_kankyo/jimusho/gesuido/ryokudo-sign.html