たまプラーザ駅前通り商店会に7年前からあるオーダー家具のお店『3rd your life style shop』。
そのはじまりやモノ作りへの思いを伺いに、社長の青木祥一氏にお話を伺ってきました。
後編は、『3rd your life style shop』の根底にある青木社長の思いを中心にご紹介します。
前編を読む
目次
国産家具の良さ
家は建築基準法の枠内で立てられますが、そこで使われる家具は基準法の枠外であるために、家自体はシックハウス症候群などに対して配慮されていても、家具はそうとは限らない。そこでアレルギー症状が出たりすることがあるのだそうです。
「Made in Japan と言われる家具は、基本的に建築基準法に則った材料でしか作りません。海外で作った家具に比べるとどうしても価格は高くなってしまいますが、国産家具の良さの一つは『安心感』です。人のことをよく考えたモノづくりが日本品質だと自負しています。
私たちの作る家具がアレルギーに対して100%安全だとは言いませんが、体感していただく価値はあると思っています。
揮発製剤などの関係で新品だとどうしてもアレルギーが出てしまう、という場合には、お店で使っているものをお譲りすることもあります。」
家具作りを始めたきっかけは
青木さんが家具作りを始めたきっかけがなかなか興味深いです。もともと青木さんはオートクチュール(オーダーメイド服)のお店でテイラーとして働いていました。何度か転職を経験した後、あるデザイナーズブランドの服を手がける企業の店舗開発の仕事で、ホテル暮らしで全国各地を転々としていた時期が4年ほど続いたそうです。
その頃の自分の匂いのものが何もない暮らしから、自分の道具に囲まれて生活することへの憧れが募った、と青木さんは言います。オートクチュールの経験から、家具作りをすると決めた時も、プレタポルテ(高級既製服)のようなものではなく、完全オーダーメイドにこだわりました。
日本一非効率な家具屋を
インテリアショップというより「家具屋」をやりたかった。お客様の話を聞いて、どんな道具を使うのがいいのか、をお客様と一緒に考える「御用聞き」のような存在でありたい、と青木社長は言います。
「たくさんのものを作ってたくさんの人を幸せにしていくデザインの仕方もあれば、一人のお客様に向けて一つのデザインを提案する仕方があるのではないかと。私たちはそちらを選択しています。そうであれば、丁寧なモノづくり、丁寧な接客が要求されます。そのためにはお客様と一緒に現場に向かいますし、何度かの打ち合わせをどうしてもしなくてはならない。図面は一枚一枚描きますし、それをお客様にも確認していただかなければならない。非効率というのはどちらか片方だけがやらなければならないものではないと思っています。ですから、3者が同等の意識を持たないと、オーダー家具というのは成り立たないんです。」
「8割の方は、どうしたらいいかなあ、と相談に来られる方が多いんです。そこで、お客様がいまはどんなものを使っていて、それについてはどんな思いでいるのか、これからどうしたいと思っているのか、改善点や残したいところを聞きながら一つの品物に仕上げていくので、お客様との共同作業であることには間違いないようにしていきたいと思っています。」
驚くのは、ほとんどのお客様に対して、運送会社などを使わず、自分たちで納品するということです。
「私たちが作った家具をお客様がどんな顔で受け取るのか見てみたいと思いますので、8〜9割は自分たちで届けています。そして納品の際に写真を撮らせていただく。ですから私たちは日本一実例写真を持ったお店だと思っています。
そしてそれがオーダー家具屋の原点かな、と。例えばあとで何かあった時にその写真を見て、遠隔でもその状況を把握できたり、対応できたりするわけです。」
施工写真がたくさんあることはもちろん新たな顧客への宣伝資料にもなるが、それより何よりメンテナンスを含めたきめ細かなアフターフォローにつながっているといいます。
「ライフスタイルは必ず変わりますから。たとえば一枚板で使っていたダイニングテーブルの無垢の天板を、3人のお子さんが成長した時に3枚に切ってそれぞれのデスクに変身させたりすることもあります。そうやってアンティーク=中古になっても、手をかける意味のあるモノづくりをしたいなと思っています。」
取材を終えて
『3rd your life style shop』の丁寧なもの作りときめ細かな接客は、本物を求める人々に支持されてきました。
そして昨年はセンター北のショッピングセンター「ヨツバコ」内に3号店をオープンし、ますます販路を拡げています。
効率が重視されがちな現代にあって、「非効率であること」を選択する『3rd your life style shop』。
インテリアに携わる者としても、その価値観やあり方がより多くの人々に支持され愛される世の中であって欲しい、と切に願います。