たまプラーザを拠点に働く女性にインタビュー⑪Webデザイナー洞澤葉子さん

たまプラーザ(神奈川県)を拠点に働く女性のインタビュー記事です。

彼女たちが、いろいろな立場や環境のなかでいかにしてチャンスをつかみ、キャリアを築いてきたのか、副業や複業、起業を考えている人、進路に悩む学生のみなさん、社会との接点を持ちたいと考えている人、すべての“働く人”のヒントになることを願っています。

プロフィール

一見さんをお得意さまに変える、おもてなしデザイン研究所 洞澤葉子さん

リピート集客に悩む起業家の方に、20年間 WEBデザイナー としてインターネットの移り変わりを見てきたITスキルを活かして、お客様との関係性を強くし何度もリピートしていただけるようにお客様に忘れられない仕組み作りをアドバイス。

おもてなしデザイン研究所HP

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新卒ではどのようなお仕事に就かれたのですか?

洞澤さん 大学を卒業後、補聴器メーカーに入社し事務職として勤務しました。

藤戸 そのお仕事をしようと思ったのはどうしてですか?

洞澤さん 仕事をすることに対してあまり良いイメージをもっていませんでした。そのため、真剣に考えて決めたわけではなく家から近いという理由で入社を決めました。大学が自宅から遠かったため遠くに通うことは大変だと思っていたからです。

藤戸 仕事へのイメージがあまり良くなかったのですね。

洞澤さん 父を見て楽しそうに働いているようには見えませんでした。ところが実際には仕事をしてみると予想外に面白く、パソコン(以降PCと表記)でデータベース作りやプレゼン資料、社内報やチラシの制作など、PCでできることは何でもやってきました。社内でもデザインが上手だと褒められ、専用のMacを与えてもらいました。PCを使った仕事は自分に向いていると感じました。

藤戸 仕事へのイメージ変わったのですね。その仕事はどのくらい続けられたのですか?

洞澤さん 1年半くらいです。もっとしっかりとデザインを学びたくなって、デザイン専門学校で勉強するために退職しました。

専門学校はどうでしたか?

洞澤さん 学校に行くと、私よりもっとセンスよくできる人や仕事の早い人もたくさんいて、自分はあまりセンスがないということに気がつきました。この状態でデザインを仕事にすることができるのか不安も感じていました。一方で、先生方や学校を運営している人たちと良好な関係が築け、授業のアシスタントや外部講師の制作アシスタントの仕事に声がかかり、いろいろなことをやらせてもらうことができました。

藤戸 ご自身を客観視しながら、コミュニケーション力が活かされて活動の幅が広がっていったのですね。

洞澤さん アシスタントの仕事は勉強にはなったのですが、収入としては不安定でした。そのため2年半ほど経験したところで、サイバーエージェントやライブドアと同じような業務内容のWebサービスの会社にwebデザイナーとして入社しました。入社した当初は10数人の小さな会社でしたが、その後上場して300人くらいの会社になりました。15年ほどお世話になり、その間に子どもを3人出産し、産前産後休暇、育児休業取得第一号として子育てをしながら仕事を続けてきました。

藤戸 IT業界というと私のイメージでは「朝が遅くて夜も遅い」印象があるのですがそれはどうでしたか?

洞澤さん そうですね。私は子どもが生まれて、早く出社して早く帰る働き方に変わったのですが、みんなは朝遅くて夜も遅く、仕事をする時間がずれたことで、役に立っている実感を持てなくなりました。そんな状況、自分の経験してきたことがどれだけ役に立つのか知りたいと思い40歳を前に派遣の仕事に転職をしました。

どうして派遣という働き方を選んだのですか?

洞澤さん チャレンジングに仕事をしてみたいと思ったからです。自分の時給を知って自分の市場価値を知りたいとも思いました。また、子育てをしていたため時間や働く場所の融通の利く仕事をしたかったということもあります。

藤戸 仕事はどうでしたか?

洞澤さん 派遣先は従業員5人のwebサービスの会社で、子育て中の男性社員もいて会社全体の業務終了時間が早くまさに希望通りでした。正社員に登用され仕事も楽しかったのですが、事業が縮小し当時の社長から会社を畳む前に次の道を決めるようにと言われました。それをきっかけにこれからどうするのか、考えるようになりました。

藤戸 働き方についてまた考えることになったのですね。

洞澤さん 会社がなくなる1年前には事務所がなくなり在宅勤務になりました。自宅で仕事をするようになると、通勤のない仕事をしたいと思うようになりました。自宅近くで仕事を探したのですが見つからなかったため、独立することにしました。

独立後はどのような仕事をしようと考えていたのですか?

洞澤さん 在宅で仕事のできる、クラウドソーシングで仕事を始めました。ところが、やってみると仕事の単価は低く、クラウドソーシングの会社の実績にはなっても個人の実績にできないことがあるとわかりました。相手とのコミュニケーションもほとんどないため交渉することもできず、このやり方で続けることは厳しいと感じ別の方法を考えることになりました。

藤戸 それは厳しい条件でしたね。

洞澤さん これからどうしようかと考えていたところ家の近くに「まちなかbizあおば(以下まちbizと表記」という個人の起業を支援しているところがあることを知り入会しました。

藤戸 「まちbiz」はどのような経緯で知ったのですか?

洞澤さん ピープルワイズカフェでまちbizが女性起業家支援のイベントをしていました。そのイベントがきっかけです。

藤戸 最初から今のスタイルで始めたのですか?

洞澤さん 最初は何でもやります!と言って、拘りなく依頼されたものは何でもやっていたのですが、まちbizや他の団体のセミナーに参加して勉強してwebサービスに絞ることにしました。

自分には作れない素敵なデザインを作る人は世の中にたくさんいて、その人たちにはかなわないと思っていました。自分の強みを考えたところ、小さな会社でいろんなことをやってきたことや、システム開発の会社で仕事をしてきたためプログラミングやサーバーの知識があり、全体的な仕組みについても理解をしているところだと思いました。その知識や経験を活かせる仕事がwebサービスでした。

洞澤さんが大事にしていることは何ですか?

洞澤さん 専門学校に通っているときに年上の女性から常に5年後、10年後をシミュレーションしながらキャリアを築いていくことをアドバイスしていただきました。その女性の言葉が心に響き、今日までその教え通り少し先を見据えてやってきました。

藤戸 洞澤さんの5年後、10年後のキャリアをどのようにシミュレーションしているのか良かったら教えていただけますか?

洞澤さん 5年後は経営者として従業員を2,3人抱えて仕事をしていたいです。10年後は一番下の子どもが18歳になるので、引っ越しをすることを考えています。そうすると、たまプラーザにはいないかもしれません。もし今いるたまプラーザという場所で自分のビジネスやサービスを立ち上げられれば、他の場所でもできると思っています。

これから起業する人にアドバイスをお願いします。

自分が大切に思うことはずっと大切にしていいと思います。周りからいろいろと言われたり、環境が許されないときもあると思いますが、自分がそれは大事だと思うことは曲げないほうがいいと思います。

最後にこのたまプラーザがどんな地域になればいいと思いますか?

いろんな種類の仕事がたくさんある場所になるといいなと思います。私が家の近くで自分のやりたいことを仕事にしてきたことを、周りの女性たちがみんな「いいな、いいな」と言います。やりたい仕事に就こうと思うと地元にはなく都内まで出て行くしかありません。近くで働くのであればやりたいことは我慢をしなければなりません。誰もが地元でやりたい仕事ができるようになるといいと思います。たまプラーザは外にお金が流れてしまっているので、この地域の中で経済が循環すると良いのではないかと思います。

キャリアコンサルタント藤戸寛子のつぶやき

洞澤さんの話を聞いて思いだしたのが、「ウサギとカメ」の話です。ウサギが油断してカメに負けたという話ではなく、ウサギはカメしか見ておらず、カメはウサギには目もくれずゴールしか見ていなかったという話です。ゴールを見ている洞澤さんにはブレがなく、一歩一歩自分の思い描いたキャリアに向かって真っ直ぐに進んでいるように見えました。

洞澤さんとのコミュニケーションは心地が良いです。それはどうしてなのか考えたところ、気負いがないということもありますが、言葉がわかりやすく受け取りやすいこと、そして相手への細やかな気遣いにあると思いました。

洞澤さんは物事を客観的に冷静に見ていて、頭の中が整理させており、自分を持っている芯のしっかりした方とお見受けいたしました。

少し先の未来を思い描くことはとても大事なことです。思い描いた自分の夢を叶えるために今できることを考えて行動することは何より大事です。行動しないと何も始まりません。夢を夢のまま終わらせるのではなく、ぜひ行動してご自身で未来を作っていってください。