木工や溶接を学べるシェア工房型拠点「KILTA yokoahma(キルタ横浜)」が2025年5月にリニューアルオープンしました。
家具から空間までをともにつくる「DIT(Do it together)」を合言葉に、職人に任せきりではなく、暮らしを自ら作れる仲間を増やそうと工房を一般開放しています。
7月にはDIY学校がスタートし、気軽に相談できるマンツーマンレッスンも開催しています。そんなキルタの原点は、東日本大震災にありました。
「全国、そして都筑区を災害に強い街にしたい・・・」キルタの代表、都筑区生まれの齋藤浩光さんに創設の思いやキルタの楽しみ方をお聞きしました。


目次
「キルタ横浜」ってどんな場所?
「KILTA(キルタ)」とは、フィンランド語で「つくる人のつながり」を意味します。
キルタ横浜は齋藤さんが経営するリフォーム会社の倉庫を活用して、KILTAの活動を支援するために改装した工房です。2018年に創立し、コロナ禍での休業を経て、リニューアルオープンしました。


「リフォーム業を25年やっているのですが、お客さんの相談の中には、こんなの自分で直せるのにって思うことが実は多いんですよ」と齋藤さんは言います。
「理想はキルタでDIYを学んだ人が、住まいで困っている人に教え、助け合うことができる世界です。大人も子どもも使う人から作れる人に変われば、暮らしの不安がなくなり、素材に触れ、モノを大切にする心を養ってもらえるはず」との思いがあります。




「今後、建設業界の職人不足は否めませんし、リフォーム費用も高騰していくでしょう」と齋藤さん。だからこそ、DIY以上、職人未満の“第三の担い手”を増やすことを目的とした「DIY学校」が重要になってきます。椅子作りなどの無料のワークショップなど気軽に参加できるレッスンも開催しており、KILTAメンバーになれば、家まわりの困り事も相談でき、「気軽に聞けるお家のお医者さんのような使い方もできますよ」と、地域に必要な頼れる工房を目指しています。
代表の齋藤浩光さんの思い
齋藤さんは、高校生の頃から政治家や起業家を目指し、延べ30種のアルバイトで社会経験を積み、24歳で独立し起業。これから人口が減少し新築が減っていくとリフォームの需要の時代が来ると考え、リフォーム業界に踏み込みます。職人から始め、大工、内装、設備と何でも網羅し、日本では数少ない、リフォームに関する全てを引き受けられる「リフォームコントラクター」として活躍しています。


現場をよく知る立場から、「職人不足の時代に低価格競争になるとさらに引き受け手がいなくなる。自分ができることを職人に任せるとリフォーム難民になりかねません。職人を待ち続ける被災地と同じような状態になる」と危惧しています。
発足の原点は東日本大震災の実体験
キルタの発足の原点は東日本大震災でした。齋藤さんは宮城県仙台の営業所で被災し、避難所の体育館で、男性が「デスクワーカーだから何もできない」と長い間寝そべっているのを目の当たりにして憤りを感じたそうです。
「被災した悲しみはわかるけど、ボランティアなどに任せきりではなく、復興活動を自らしないといけないと自助力の欠如に危機感を覚えました」


同時期に、齋藤さんはなんと白血病を患い骨髄移植のために入院してしまいます。震災復興で苦悩する街と人々や同じ病気で亡くなる仲間と過ごす中で、幸いにも骨髄移植に成功し「生かされた時間をどう生きるべきか」を考え、入院中でありながら同じ思いを持った人を探し、Facebookを通して、くわばらゆうきさんと出会いました。
くわばらさんは東日本大震災時に岩手県陸前高田で、流されてしまった集会所を住民の皆さんと木のブロックを積み上げて再建した経験がありました。「暮らしをつくれる人」を全国に増やしたいとの思いが一致したのです。


このような思いから、地域に密着したシェア型の工房を作り、存続させるためには賛同してくれる仲間を募って寄付型組織として成り立つようにしようと2018年に財団を設立。都筑区内に工房を作り、こうしてKILTAが歩み始め、本格的な活動がスタートしました。
今では全国(秋田、神奈川、兵庫、京都、富山、島根、山口)に同じ思いを持って活動できる仲間と拠点ができ、ネットワークを大切にしながら「ともにつくるワークショップ」を拡げています。
子どもも大人も楽しく実体験を
KILTAの活動は工房内だけにとどまりません。都筑区内の小学校の先生からオファーがあり、複合学習の中にKILTAの体験授業を行なう予定もあるのだそうです。
「時代の変化に伴い、学生の中には鉛筆や消しゴムに名前を書かず、100均でまた買えば良いと思っている子もいるよう…」という先生から相談を受け、「図工や家庭科の教育に含まれていない、物の大切さや作る過程、プロセスを体験から学べるようにしよう」と、先生方と打ち合わせ、授業の内容をすすめています。「いずれは校舎のメンテナンスを先生や子どもと保護者でできる環境になると良いですね」と構想を考えています。




「都筑区民まつり」のブース出店など地域の行事にも参加する予定ですが、幼稚園のイベントなどにも介入して幼い頃からモノ作りの楽しさを感じてもらいたいと、やりたいことは盛りだくさん。


「災害はいつ自分の身に起こるかわかりません。例えばエアコンの空気口や外壁の修理なども知識と技術があれば自分でできるんですよ。わからないことはAIで調べればわかるけど、実践する場と教えてくれる人がいないと行動にうつせない。災害があったときに直せる技術や道具や資材があれば安心ですよね。日本中がそうなれば良いですけど、まずは地元の都筑区から!」。
今後は建設会社や工務店などに声を掛け、拠点となる工房をどんどん増やし、困ったときに「自助力で直せる人が支え合う頼もしい街にしたい」と今後の構想を練っています。
興味のある方は見学もできるので、キルタに気軽に足を運んでみてくださいね。




施設情報
住所:横浜市都筑区茅ヶ崎南4-1-19
料金:工房は月額(平日限定5,000円、月40hまで。などプラン多数)や、1時間単位(1,500円/h、以降1,000円/h)でも使用でき、中学生は半額です。
DIY学校:年齢不問。
【初級】道具の使い方、棚や小物など自由なサイズや色で、自分が欲しいものづくりマンツーマンレッスン
【中級】机や椅子作りなどの無料のワークショップまで、気軽に参加できる様々なレッスン
【上級】壁紙・床シート貼替・断熱二重サッシ取付などの住まいの困り事が学べる講座
溶接作業などもできます。そのほか単発イベントもいろいろ
キルタホームページ:https://kilta.jp/yokohama/