リビングラボ勉強会参加レポート・中編~Wise Living Lab

横浜市と東急電鉄が推進する「次世代郊外まちづくり」の情報発信や活動拠点となる施設「WISE Living Lab(ワイズリビングラボ)」。でも、そもそもリビングラボってなんなのでしょう?2018年1月26日に開催された「リビングラボ勉強会Vol.2」で勉強してきました!

中編はNTTの考えるリビングラボについてと、2つのリビングラボ事例紹介です。
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NTTの考えるリビングラボ

安岡さんは、NTTと日本型リビングラボを共同研究しているということで、次に登壇したのはNTTサービス研究所の赤坂さんです。

NTTが提唱するリビングラボの定義は、先ほどの安岡さんの定義と若干異なります。「リビングラボとは、製品・サービス企画や政策立案の主体と生活者が共に、生活者の実生活に近い場で、仮設の探索や解決策の検討・検証を実験的に行うための仕組みである」。

この定義ですと、必ずしも地域課題の解決を目的としなくてはいいわけで、企業がCSRではなく、営利目的で参加しやすくなりますね。とても民間企業らしい定義だと思いました。
ユーザーは被験者ではなくパートナー、仮説検証ではなく仮説探索、という表現もとてもイメージがわきやすかったです。とはいえ、やはりその地域にどんな問題があるかを一緒に抽出し、解決するスタイルが多いそうです。このプロセスを通じて、住民と企業両方が学習し、よりよい社会を作っていくのですね。

日本型リビングラボの成功のカギとは

その後の質疑応答時間に、僭越ながら質問させていただきました。

私の疑問は、北欧の事例はわかった、でも、日本で住民は本当に参加するのだろうか?そして、リビングラボは成り立つのか?ということでした。たまプラの地域活動に携わるようになったのはここ最近ですが、地域活動を頑張っている人たちと一般の住民たちの温度差は大きいと日々感じているからです。

その場ですぐに腹落ちしたわけではなかったのですが、赤坂さんの回答は、NTTのリビングラボの定義も踏まえると、納得がいくものでした。

北欧との違いとして大きいのは、社会制度に違いによる官民のマインドの差。住民はすごくたくさん税金を払っていて、何とかして公共施設を利用しようという意欲がとても強く、そして、自治体側も、住民がやりたいことを実現するのが使命だと思っているとのこと。これはかなり日本人との意識に隔たりがあり、それは課題でもあります。

実際のリビングラボのやり方は、関係者のトップ同士がにぎるコアラボでKPI(目標となる指標)を決めるところからスタートし、そこからだんだんと関係者を広げていくそうで、というのが成功のカギとなるそうです。

ここからは私の解釈ですが、KPIがあるということは、企業なり行政なりが必死になって達成を目指すわけで、地域貢献意識の低い住民に対しても、まずは実利的なメリットを与えるところからスタートする、という手法をとることもできます。また、この後でてくる鎌倉ラボは、まだ地域課題の解決といったフェーズにはいたっていませんが、商品開発を通じてそのステップに進む土壌は作られているように感じました。入口は貢献意識でなくても、次第に主体的に街のことを考えるようになるという流れは作ることができるのかもしれません。

 事例紹介①鎌倉リビングラボ

続いての登壇は、鎌倉リビングラボを運営するNPO法人タウンサポート鎌倉今泉台 青木さんです。

鎌倉リビングラボは、円覚寺の裏山ある今泉台にあります。この地域は、高齢化率45%超という地域です。リビングラボは、1年前に街の活性化を目的に設立されました。こちらは東京大学高齢社会総合研究機構との共同プロジェクトであり、東京大学から提供されたテーマについて活動するスタイルをとっているとのことです。

提供されるテーマは、医薬品パッケージ、高齢者向けシャンプー・コンディショナー、見守りアプリが入った高齢者向けタブレット、新型モビリティなどの商品開発モニターがほとんどです。通常都内で行っている調査とは別の、層の意見をヒアリングできることが企業にとってのメリットです。

現在登録モニターは男性28名、女性44名の計72名がおり、そのほとんどがクチコミでモニター登録をしています。モニターの方たちは、自分の意見が商品開発に活かされたり、人の役に立ったりできることに喜びを感じているようです。

現在の課題は、高齢者中心の地区であるため、行政を巻き込んで地域課題を解決する、ボトムアップでの地域課題解決する、というステップまで進むのが困難であることです。しかし今泉台は、現在子供世代が戻ってきて、空き家率が低下していることや、もともと小さい町にあるサークルが30もあり結びつきの強い地域であることなど、強みも多くあります。
1年任期の町内会ではなく、長期的視点で考えられるNPO法人が地域活性化を担うことで、
今後ますますの発展が期待されます。

 事例紹介②リビングラボの採点表

最後の登壇者は、ソーシャルビジネスデザイン研究所および合同会社たまプラ・コネクトの藤本孝さんでした。

藤本さんは、過去によくアイデアソンやハッカソンに参加していましたが、それ自体は面白いものの、単発のイベントではなかなか実現するところまで行きつかないことに課題を感じていたそうです。継続的な取り組みにするため、リビングラボの仕組みに関心を持ち、子育てママを対象としたリビングラボプロジェクトを実施しました。数社の大企業と連携した6か月間の大きなプロジェクトを経て、その反省点から、リビングラボプロジェクトの進め方のポイントがわかってきた、とのことです。

ポイントは、①連携する企業を増やし過ぎずシンプルな構造にすること、②お金を出す人を最初から明確にすること、③プロダクトではなくサービスのデザインをすること、④短期集中のプログラムにすること、⑤すでにあるコミュニティを活用すること、⑥住民とともにサービス具体化していくこと、です。

たまプラーザは、みんなが集えるワイズリビングラボという場所があり、コミュニティも多く存在するため、リビングラボを進める場としては最適とのこと。次世代郊外街づくりが始まって以来、ポストイットを使用して意見を出すワークショップが何度も開催されていましたが、藤本さんは「そろそろポストイットの先に進みたい!」と表現していました。

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