新石川4丁目の自宅で、「Labo Party(ラボ・パーティ)」という英会話教室を開いている加藤千晴さん。このラボ・パーティ、単純に英会話を教えるだけではなく、情操教育の要素もあり、感度の高い保護者から絶大な人気を誇る教室なのです。ご自身の4人のお子さんもラボ・パーティで育てた、という加藤さんにお話を伺いました。
目次
ラボ・パーティはどのような英会話教室なのですか?
ラボ・パーティは創業53年の老舗英会話教室です。普通の英語教室は英語を習得するために通う場所だと思うのですが、ラボ・パーティでは英語を使いながら、人として育つことを重要視しています。
人が成長したり、人間関係を育んでいくには言葉が必要です。1人で英語が言えた・書けた・わかった、ではなく、アウトプットしあったり、英語自体は間違っていてもその場を楽しんだりすることを重要視しており、サマーキャンプやホームステイなどの友達との交流プログラムもたくさんあります。
そして、何よりも素晴らしいのが教材です。会員だけが購入できるラボ・ライブラリーという絵本とCDのセットなのですが、そのクオリティがとても高いのです。福音館書店の絵本を本の装丁はそのままに英訳したものだったり、朗読CDのBGMは本格的なオーケストラだったり、役のセリフを読む人は専門の声優さんだったりします。例えば、シェイクスピアであれば、翻訳はその道の権威である河合祥一郎さんが担当し、イギリス英語で朗読されます。
ナーサリーライム(童謡とか親が子供に歌ってあげるような歌)から、ピーターパン、アリス、北欧のお話、トムソーヤ、CWニコル、歴史の話、聖書まで内容は幅広いです。世界中の話があるので、ドイツってお城があって森があって、といった世界の風土や文化も一緒に学ぶことができます。英文科出身のお母さんは大学のテキストがこんなのだったと言いますね(笑)
その教材で実際どんな授業が行われるのでしょうか?
授業時間は幼稚園までは60分、小学生が90分、中高大学生が2時間です。
クラスによって、やり方は様々ですが、最初は英ごと日本語が交互に流れるCDを耳で聞いて、その後、英語のみに。それからシャドウイング(音声を聞いた後、即座に復唱)したり、感想を言い合ったりします。最初は日本語で意見を言って、段々ジェスチャーを交えながら英語にシフトしていきます。自然と劇ごっこになることも多いですね。いろんなキャラクターになることで、視点が変わり、気づきも多くなります。そうやって一つのお話を極めていきます。
そういったことの積み重ねで、人前でしゃべったり、表現をしたりすることが上手になっていきますし、グローバルな視点で、きちんと意見が言える、聞ける、相手の気持ちがわかる人間性も身についてくのです。
ちなみに、題材となるお話は合議制で決めています。そこで、多数決に頼らない意思決定の仕方も学べます。
いろんな物語がありますし、興味を持つ入口も子どもごとに違います。ある物語がとても気になって調べてくる子、絵に描いてくる子、歌が好きな子、みんなが愉しんでいるのを見ているのが好きな子、リーダーシップをとる子、いろんな子がいますが、みんな共存できるのも魅力です。
教材はそのラボ・ライブラリーだけなのですか?
そうなんです。しかも、0歳から大学生まで同じものを使っています。
学校の英語は、聞く、文法を習う、っていう訓練が中心ですよね。アウトプットまでするのが学校や塾では難しいんです。ラボ・パーティは学校では学べないことを埋める場所です。
もちろん、文法について聞かれれば、答えますが、積極的には教えていないです。しかし、ベースが身についているので、いざ英語の授業が始まった時には、読み書き文法の習得スピードもとても速いです。
また、クラスが異年齢混合なのも、ラボ・パーティの特徴です。小さい子は大きい子に憧れ、大きい子は小さい子の面倒を見る、というのも良さの一つです。その影響なのか、教職をとって、学校の先生になる子も多いですね。
とても楽しそうですね!
親の気持ちとは裏腹に、英語をマスターしたいという気持ちで来る子はいないんですよね。楽しいから来るんです。現在通っている小学生のお子さんも「年齢関係なく意見が言い合えるし仲良くなれるところがいい」「色々な物語を聴いたり動いたりできるから楽しい」と、それぞれの楽しみ方をみつけています。
リラックスしている方が、よく覚えられるので、クラスでは、できるだけ自由にふるまえる空気を作るように心がけています。お家でも聴くことを推奨しているのですが、子供がクラスと同じような行いをした時に、お母さんが一緒にやったり、リアクションができたりするとさらに伸びていきます。また、食事中にCD流したりすることで、自然と耳に入れるのもいいですね。
加藤さん自身は、英語はどこで学ばれたのですか?
最初に英語に接したのは、小学校の頃で、ネイティブの英会話教室に通っていました。でも、その先生が日本語を話せないこともあり、全然話が伝わらなくて単調な会話にしかならず、すごくつまらなかったんです。
それでも、小さい時からやっていただけあって、発音はすごくよくなりました。それで、中学校の最初の英語の授業で力を発揮できるはずだったんですが、うますぎてクラスメイトに笑われたんですよ(苦笑)その上、先生もほめてくれず、逆に日本語的な発音に直され、それから英語が大嫌いになってしまいました。
それはひどい!英語を好きになるきっかけはあったのですか?
学生時代はずっとトランペットをしていて、次第に楽器の製造修理の勉強をしたいと思うようになりました。しかし、その学校は日本になくて、ドイツとアメリカのみだったんです。
ドイツ語は英語よりもわからないので、仕方なくアメリカに留学しました。しかし、あろうことか、日本に辞書を忘れていってしまって(笑)。それで、わからない単語は状況を絵に描いて、家に帰ってから日本語交じりの英語で意味を特定したりしているうちに必然的に英語力が上がっていきました。
もともと英語は嫌いだった、という加藤千晴さん
そこからなぜ英会話教室を開くことになったのですか?
楽器製造の技術者としてやっていきたかったのですが、当時そういった職場は男性だけだったんです。女子トイレもなくて!それで一旦諦めて、稼ぐために英会話教室の講師バイトを始めました。そうこうしているうちに、結婚・出産をして結局楽器の仕事はせずに終わりました(苦笑)
出産してから、子供にどんな英語教育をしたらいいのか、すごく考えました。自分は英語でとても苦労しましたが、英語を身に着けたあとは、好きなことを通じて友達がたくさんできて視野が広がったので、子供には嫌いにならないでほしいと切に思っていました。
いろいろ調べている中で、ラボ・パーティに出会い、教室を開くための説明会に行きました。実は、最初は自分の子にだけ教えられれば、それでいいと思っていたんですよ。
最初の生徒さんはお子さんだったんですね
スタートした24年前、一番上の子が2歳で、2番目は1歳手前の年齢でした。兄弟だけでやるのもさびしいので、近所の人に声をかけ、それからだんだんと広がっていきました。
今も、中高大学生のクラスには我が子がいます。集団の中での子供の姿が見られるのも役得ですね(笑)。中学生以降、そういった機会って減ってくると思うので、父母会でもお子さんの様子をしっかりフィードバックしています。そのためか、保護者の方からは、「先生というより、子ども達にとっては親の次に近い大人」という意見もいただいています。
毎年夏には3泊4日のサマーキャンプが開催される。
ご自分のお子さんを教えるのは難しくないですか?
もちろん、反発があったり、だるそうに参加していた時期もあります。でも、ラボ・パーティの生徒には本当に優しいいい子が多くて、あんな感じの子になってほしいという気持ちが強くて、どうしても続けてほしかったのです。それで、一時期お休みをしたり、違うところの先生に行ったら、という提案をしたりしながらなんとか4人とも続けてくることができました。
夫の仕事の都合で、家族でアメリカのシカゴに数年住んでいたことがあるのですが、その時の子どもの順応性を見て、続けてきてよかったなと思いました。
長く続ける生徒さんが多いのですか?
今年大学を卒業した子は、1人は20年、もう1人は途中受験で5年休会をしましたが、15年在籍しました。
大学まで在籍してくれた子は、「リーダーシップ、語学力、伝達力、コミュニケーション力が身についた」「同じ目標に向かって一緒に努力し、一緒にいろいろな経験をし、思いを分かち合える仲間ができた」「新しい自分や考えと出会える貴重な場だった」と言うような声を寄せてくれています。
サマーキャンプやホームステイもよい経験になっているのでしょうね
宇宙飛行士の若田光一さんは、ラボ・パーティのOBなのですが、中学生の時に行ったアメリカでのホームステイは、宇宙に行った時よりも刺激的な経験だったとおっしゃっています。
今の子ってすぐ親やスマホに頼るので、基本的に自己解決能力が低いんですよね。でも、私がホームステイの引率をした時、全然自分から行動するタイプではなかった子が、立派にホームステイをやり遂げて、その成長に驚きました。リスニング力が鍛えられているので、家族の言葉が全部わかるというのも大きかったようです。
サマーキャンプではいつもとは違うメンバーと、スマホ、テレビのない3泊4日の共同生活をします。最初はみんな帰りたいと思いますが、そこで仲間ができ、いろんなことを乗り越えた時に感動があります。最終日には帰りたくない、という子がほとんどです。
かけがえのない経験ができるホームステイ
これからやっていきたいことはありますか?
ラボ・パーティの活動としては、現在たまプラーザ駅近くでやっている方の教室を引き継ぐことになったので、新石川4丁目はちょっと遠くて通えなかった方にも通える環境を作っていきたいです。
また、個人的には楽器の仕事も諦めていません!実家に道具がいっぱいあるので、それをトラックに積んで、日本中まわって、いろいろな学校の今必要な楽器の調整や修理をしたいなと思っています。楽器屋さんに預けると、2週間くらい修理にかかってしまい、その間練習ができなくなってしまうので、その場で修理ができたら喜んでもらえると思います。