元石川高校 アントレプレナーシップ教科 最終報告会・前編

神奈川県立 元石川高等学校で、2017年度に初めて開講された2年生対象の選択授業「アントレプレナーシップ(起業家精神)」。2018年3月14日に行われた生徒たちによる最終報告会を取材しました。

前編では、アントレプレナーシップ科目の主旨と、3つのテーマの発表内容について御紹介します。

教科「アントレプレナーシップ」とは

これからの社会をたくましく生きる力を醸成することを目的に、教員、企業、大学、地域が協働し、開発した元石川高校独自の事業です。6名程度のグループで各テーマの課題を発見し、関連の情報を自ら学びディスカッションとプレゼンテーションを繰り返し、解決策を導き出すプロジェクト型授業です。

この授業を通して生徒たちに学んでほしいこととして、「知るを愉しむ」「壊すを愉しむ」「作るを愉しむ」の3点があげられています。いわゆる社会人のシゴトとして、通常行われている課題を発見し、解決策をチームで考え、検証し、発表する、そしてそれを繰り返していく、というプロセスを高校生のうちから体験することで、社会で活きる力を養っていきます。

今年度は、114名がこのクラスを履修しており、19チームに分かれ、1年間を通じ、電通総合研究所内アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所のサポートを受けながら、5つテーマに取り組みました。報告会は、元石川高校の視聴覚室が行われ、1チーム5分の持ち時間で、各チームが発表を行いました。ちなみに、各企業に対する発表はすでに終了済みだそうです。

テーマ①JICA国際交流プロジェクト~教育について提言

発展途上国の生徒たちがよりよい学校生活を送るためのプランを考えるテーマです。各チームで対象国とターゲットを決め、様々な観点から提案を行っていました。

提案されたプランは下記の通りです。
・ウガンダの生徒たちの時間割を日本式に改革する
・チャドの生徒たちが水族館の計画から維持まで行い、専門性・多様性を持ったスキルを取得するとともに、水族館を中心とした街の経済発展を目指す
・アフリカの小学生・中学生がじゃがいもづくりを通じて学ぶとともに、育てたじゃがいもをブランド化して地域活性化をする

このプランは、一番自分たちの日常から遠く、提言するのが難しかったプランだったのではないかと思います。しかし、このクラスを通じて、アフリカの同世代の若者たちの現状を知ることができ、国際的な課題について考えることができたのは、非常にいい経験となったのではないかと推察します。

テーマ②午後の紅茶の10代ファンづくりプロジェクト

キリンビバレッジの人気商品「午後の紅茶」を10代の若者にもっと飲んでもらうためのマーケティングプランを提案するテーマです。

提案されたプランは、以下の通りです。
・「〇〇の紅茶」として、午後の部分を空白にして売り出し、ユーザー自身にこの空白を埋めてもらいSNSでムーブメントをおこす。
・午後の紅茶の面白い飲み方をした写真を「#午後フォト」のハッシュタグ付きでInstagramに投稿してもらい、面白いものは公式アカウントで再投稿することで、話題性をつくる
・青春、恋をテーマに「ストレートティー」「ミルクティー」「レモンティー」の3本のショートムービーを作る
・アフタヌーンティーを始めた貴婦人アンナマリアをモチーフとしたFree Wi-Fiつきの像「ゴゴゾウ」を、桜木町に設置する
・誕生日パーティーで午後の紅茶を飲むことを促進する「Happy Birth Tea」キャンペーンを実施、SNSで拡散する

同世代がターゲットとあって、最も「高校生らしさ」が求められたテーマでした。プランを練るプロセスでは、高校生らしさをどう出すか、で皆さん悩んでいたようですが、どの案も高校生ならではの発想で面白いと感じました。

テーマ③KEYTALKの新たなファン層開拓プロジェクト

ビクターエンタテインメントの所属アーティストである若者を中心に人気のロックバンドKEYTALKのファン層を拡大するためのマーケティングプランを提案するテーマです。

提案されたプランは、以下の通りです。
・足元に突如現れるKEYNOTE。プロジェクションマッピング、マンホール、床へのペイントアートで通行する人たちにアピール。
・KEYTALKがヒーローとなり、拠点の下北沢で清掃活動をしながらゴミをポイ捨てする怪人などを取り締まるショーを行う。
・抽選でKEYTALKライブの年間パスポートをプレゼントし、様々な特典を与える。音楽界初の「年パス」で話題性を作る

従来のプロモーション方法とは全く発想が求められ、苦しんだチームが多かったようです。しかし、最終的には大人の想像を超えた高校生らしさや話題性を伴ったアイディアが飛び出しており、実現したら面白いなと思える案も多くありました。

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(写真:たまプラ新聞/長坂断)

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