たまプラーザを拠点に働く女性にインタビュー⑨

たまプラーザ(神奈川県)を拠点に働く女性のインタビュー記事です。

彼女たちが、いろいろな立場や環境のなかでいかにしてチャンスをつかみ、キャリアを築いてきたのか、副業や複業、起業を考えている人、進路に悩む学生のみなさん、社会との接点を持ちたいと考えている人、すべての“働く人”のヒントになることを願っています。

第9回 キャリアインタビュー

フードコーディネーター、調理師、惣菜管理士、食品コンサルタント、ファスティング指導

星川恵里 さん

プロフィール

味の素株式会社食品研究所にて「おいしさの研究」に携わる。

味の素上海研究センターの立ち上げを任されて3年間上海に赴任。

14年勤務した後、退職後は食品コンサルタントとして料理研究、食の安全性などの観点からの講演活動、日本オーガニック協会の監査、オンラインでファスティング指導など幅広く活動中。

実績

味の素食品研究所研究所長賞2回授賞、社長賞受賞、味の素にはご自身の名前のついた食品素材があるほか、日経新聞、プレジデント誌にも取り上げられる。

インタビュー

星川さんが食の道に進むことを決めたきっかけを教えてください。

私が高校2年生の頃、地元で名医とも言われていた祖父が癌のため亡くなりました。名医といわれていても自分の命を救えないことに少なからずショックを受けました。

親族には医者が多く、周りからも医者になることを勧められていましたが、医者になっても助からないのであれば、衣食住の日常を整えることで病気にならない生活をすることに関わりたいと思うようになりました。

そのなかでも食は生まれてから死ぬまで長く人に関わり、また私自身も食に興味があったため、人の生活に役立つ「食」の道に進むことを決めました。

どうして食品の研究をしようと思われたのですか?

星川さん: もともと理系で研究することが好きだったからです。食品の研究をするのであれば、味の素で研究したいと思っていました。そのため、大学も味の素の研究内容に近い研究室のある大学に入学しました。

藤戸: そのような視点で大学を選び憧れの仕事に就いたのですね。味の素ではどのようなことを研究されていたのですか?

星川さん:「おいしさの研究」をしていました。そこで14年間、研究を続けてきました。途中、3年ほど上海に研究センターを作るため派遣されていました。

藤戸:「おいしさの研究」ではどのようなことをしていたのですか?

星川さん: 例えば、同じ材料で主婦とプロの料理人がホワイトソースを作るとどのような違いがあるのか実際にそれぞれに作ってもらいます。

同じ材料にもかかわらず味が全く違い、やはりプロは美味しいです。プロと主婦の違いを分析して、どうやったらプロの味を商品に再現できるのかを研究します。

藤戸: 研究を通して品質向上に貢献されてきたのですね。その結果が、研究所所長賞2回の受賞、社長賞だったのですね。ご自身の名前のついた食品素材もあるのですね。

星川さん: そうですね。自分の好きなように研究を続けられことが結果につながったと思います。社長賞を受賞できたのは、実際にニュージーランドの工場まで行って実験ができたことで、成果につながりました。とても恵まれた環境で仕事ができたと思います。

藤戸: 上海の研究センターの立ち上げにも尽力されたのですね。

星川: 上海はもともと1週間の出張だったのですが、1ヶ月になり3ヶ月になり、気がつくと3年がたっていました。中国の食文化も体験できる貴重な経験になりました。

充実した毎日を送られていたと思うのですが、そこからどのような経緯があって退職を決意されたのですか?

星川さん: 会社や仕事が嫌になって退職したわけではありません。仕事は充実していてとても楽しかったです。ですがあるとき、多忙な毎日のなかで疲れた体に加工食品を食べても元気にならないということに気がついたのです。

手作りのご飯にはかなわない、加工食品の限界を感じてしまったのです。ちょうどその頃、介護食の開発に携わっていて介護施設に見学に行く機会がありました。

施設にいた高齢者の中には自分で食事も排泄もできず、ただ流動食を摂るだけの方もいらっしゃいました。その様子を見て、高齢になってからも自分のことは自分ででき、食事も自分の意思で食べられる生活を送っていたいと思いました。

これまでとは違う「食」についてあらためて考えるようになりました。

藤戸: 退職はすぐに決断されたのですか?

星川さん: 悩みましたが、これからは食を通して病気にならず元気に自分の力で生活を送ることができる食生活について考える道に進むことを決意しました。味の素では食品の安全に気を配り、日本の食が安価に提供できることに携わることができ、とても充実した研究生活を送ることができました。

 

藤戸: 退職後は食を通していろいろなことにチャレンジされているのですね。

星川さん: そうですね。コロナになる直前だったのですが、米国で病院の治療で使われているファスティングを学ぶ機会がありました。インターミッテントファスティングと言うのですが、オートファジーがファスティングによって働くことで、体を良い状態にすることができます。それをオンラインで実践できる場を提供しています。

藤戸: 今の時代にあったファスティングの場を提供されているのですね。今後はどのような活動を考えていますか?

星川さん: 食生活の関心を高めていきたいと思っています。特に食を通して、子どもたちを元気にしていきたいと思っています。

最後に、たまプラーザがどんな地域になることを願っていますか?

ここに住んでいるみなさんは意識の高い方が多いと感じています。自然や環境に興味を持たれている方も多く、そのような人たちが今後も増えて、自分たちにできることを取り組める地域になるといいなと思います。

キャリアコンサルタント藤戸寛子のつぶやき

星川さんの名前のついた素材ができるまでの話を聞いたとき、そこにはたくさんの人の喜んでいる顔が見えました。また、ファスティングで使うスムージーの試作を重ねて美味しいものが完成したという話を聞いたときも、飲んだ人の喜んでいる顔が見えました。
星川さんの取り組む姿勢には、その先にいる人たちの喜びや笑顔が見え、相手を思い考える深い愛情を感じます。好奇心旺盛で行動力があり、それが探求に繋がり人が感動する商品の開発に繋がっているのだと思います。

ビジネスで自分のやりたいことを叶えていくには、行動に移すことはとても大事です。考えるだけでは実現することはできません。特に慣れ親しんだ環境から踏み出すときには勇気がいります。
そのようなときには同じような志を持った人たちが周りにいると踏み出しやすくなります。もし、一人で悶々としている人がいたら、ビジネスコミュニティや地域活動などに参加してみてください。