たまプラーザを拠点に働く女性にインタビュー⑥出張お花屋さん岩澤聡子さん

たまプラーザ(神奈川県)を拠点に働く女性のインタビュー記事、第6弾です。

彼女たちが、いろいろな立場や環境のなかでいかにしてチャンスをつかみ、キャリアを築いてきたのか。

副業や複業、起業を考えている人、進路に悩む学生のみなさん、社会との接点を持ちたいと考えている人、すべての“働く人”のヒントになることを願っています。

プロフィール

インタビューさせていただいたのは、出張お花屋さん“yellowplants”岩澤聡子さん。

黄色いお花屋さん”yellowplants”として、店舗を持たず黄色い車でお花を運び、カフェやマルシェにお店を出店

【サービス内容】
1,生花販売
店舗を持たずカフェやマルシェ、病院や高齢者施設などに出店
2, 園芸
個人邸を中心にお庭や花壇の管理や鉢の植え替え
3,フラワーアレンジ
ご依頼主様のご希望に合わせたフラワーアレンジメントやクリスマスリース、お正月飾
りなどのミニワークショップを開催
HP: https://www.yellowplants.net/
Instagram: https://www.instagram,com/y.plants

インタビュー

黄色の車が印象的ですが“yellowplants”の名前の由来を教えて下さい。

岩澤さん:広告デザインの仕事をしていた時に、黄色にとても惹かれるきっかけがありました。そして早春に咲く花も、黄色が多くて元気になるし目立つ色ですよね。そこから黄色のyellowと扱っているモノが植物(plants)で”yellowplants”にしました。

藤戸:そのような由来があったのですね。それで車も黄色なのですね。

岩澤さん:そうです。黄色なのでわかりやすくてすぐに覚えてもらえます。今の車は4台目ですが初代パジェロも入れて4台とも全て黄色です。

岩澤さんが今のスタイルのお花屋さんにたどり着くまでを教えてください。

美術系の専門学校を卒業後、百貨店の広告等を制作する広告デザイン事務所に入社しました。デザイン事務所を退職後、米国に3ヶ月滞在し帰国後、園芸店に勤務(パートで入社し後に正社員)しました。

園芸店を退職後は庭のデザイン会社を経てフリーになりました。最初は個人邸の植栽計画や庭のメンテナンスなどを受けていましたが、今の出張お花屋さん”yellow plants”としてスタートしたのは2019年からです。

 

今のお仕事につながるのは米国が鍵のようですが、米国に行く前と行った後とに分けてもう少しお話を聞かせて下さい。まず美術系の専門学校に進むきっかけを教えて下さい。

小さい頃から絵本が好きで、将来は絵本作家になりたいとも思っていました。高校生のときに本の装丁や書体好きが高じて本屋でアルバイトしていました。

本屋でアルバイトというと本を読むことが好きと思われるかも知れませんが、私は、違う意味で本が好きでした。

ちょうどその頃、進路についても考えていたのですが、あらためて文字の「色」や「形」、文字のバランス、紙の質感などが好きだと思い美術系の専門学校に進みました。

新卒で入社した広告デザイン事務所はどのような経緯で入社されたのですか?

専門学校の先輩から紹介のあった百貨店系の広告デザイン事務所に入社を決めました。

仕事はいかがでしたか?

この会社は3年ちょっとで退職したのですが、今でも当時の上司や仲間と繋がりがあります。人間関係はとても良かったのですが、絵本作家になる夢もまだありましたが、自分のやりたいことと仕事に何かズレを感じていました。そうですね、自分の才能に限界を感じたと言った方があっているかもしれませんね。そのようなときに米国にいる幼なじみから結婚式に招待され、出席を兼ねてアメリカに行くことにしました。それをきっかけに退職しました。

米国にはどのくらい滞在されていたのですか?

岩澤さん:2度目だったのですが、そのときは3ヶ月滞在しました。前回滞在したときに行ったヨセミテ(国立公園)にまた行きたいと思いました。

ヨセミテでは雄大な大自然に触れ、森にあるたくさんの木々からインスピレーションを得ました。仕事の経験も知識もありませんでしたが、ここで自然に関わることを仕事にしようと心が定まったのです。

藤戸:ヨセミテへの訪問は大きな転機だったのですね。

岩澤さん
:そうですね。木や森に気づかされた感じがしました。

帰国後はどのようなお仕事に携わってこられたのですか?

近所の園芸店にアルバイトで入社しました。買い付けから陳列、接客、お店作りを一から学びました。後に正社員として商業施設のフロアーマネージャーとして売上管理にも携わり、ゴールデンウィーク中の数日間だけで売上げ1000万円を達成することもできました。

全く経験のない分野に飛び込んで、そこまでやり遂げることができたのはどうしてでしょうか。

岩澤さん:一緒に仕事をしていたバイヤーの人が仕入れから販売まで必要なことを全て教えてくれました。また、植物の知識を深めるためにたくさんの本を買って勉強もしました。

新卒で入社した会社の仕事は自分の力が達していないような気持ちが常にあって心が折れかけていたのですが、この仕事を経験したことで、自信を取り戻すことができました。この時の知識や経験は今の仕事の土台にもなっています。

藤戸:やりがいがあり充実した時間だったのですね。園芸の仕事に飛び込んでからフリーランスとして独立するまではどのような経緯があったのでしょうか。

岩澤さん:最初に入社した園芸店でそのうちお客様からお庭のことを相談されることが増えてきました。それがきっかけで庭に興味を持つようになりました。園芸店は物販店だったため、庭そのものに携わりたいと思うようになりました。

庭をデザインする会社に移ったのですが、構造物ではなく植物そのものに関わりたいと気付き、個人邸のお庭の植栽計画やメンテナンスに携わるようになりました。

どうしてフリーになろうと思ったのですか?

岩澤さん:結婚もしていたので時間の使い方を自分の好きなように自由に使いたい思いがありました。そして、これは私の性格なのですが、毎日同じ場所に出社するより、いろいろなところに行ってみたいという好奇心もありました。

藤戸:そこから今のお仕事になったのですね。

岩澤さん
:そうですね。最初は個人邸の植栽計画やお庭のメンテナンスを中心にやっていました。独立して最初のお客様(個人邸のメンテナンス)とはもう20年近いお付き合いになります。

藤戸:長いお付き合いをされているのですね。そこから今のような出張スタイルになったのはいつからですか?

岩澤さん:2019年からです。イベント会社の方から住人の人向けのイベントでクリスマスリースを作るワークショップをして欲しいという依頼がきっかけです。

リース作りはどちらかと言うと切り花業界の内容でしたので、事前にアレンジメント教室に通って学びました。このアレンジメント教室の先生からは、切り花でビジネスをするための様々な意見やアドバイスをいただきました。今でも何かあると相談させていただくのですが、とても良い師匠に巡り会うことができました。

藤戸
:アレンジメント教室の先生との出会いが今のスタイルのきっかけでもあるのですね。

岩澤さん:そうですね。いいご縁をいただけたと思っています。先生と出会った頃、庭仕事を一人ですることにだんだん寂しさを感じるようになっていて、人と交流して繋がりたいと思っていました。先生から意見をいただきながら、切り花の出張販売を始めることにしたのです。

販路先はどのようにして見つけたのですか?

ピープルワイズカフェさんはまちbiz(横浜市青葉区たまプラーザにある起業支援センター)で知り合った起業仲間の人から「ワークショップを開催できるカフェがある」と聞いたことがきっかけです。

また、同じまちbizの交流会で知り合った「3丁目カフェさん」は、カフェでお花の販売をさせて欲しいとお願いしたところ、すぐに出店が決まりました。この3丁目カフェさんへの出店が出張お花屋さんの始まりです。

その後、ピープルワイズカフェさんが三丁目カフェさんのお花の販売を見に来て下さり、そのご縁でピープルワイズカフェさんでも出張お花屋さんを始めることになりました。

ロコっちさんは三丁目カフェさんからの紹介で出店させていただくことになりました。出店するようになったら、徐々にいろいろな場所から声をかけていただくようになりました。

今はどのようなところに出店されているのですか?

定期的に出店する場所も増えてカフェや歯医者さん、そして来年から高齢者施設でも販売することが決まりました。出店を覚えてお花を買いに来てくれる顔見知りのお客様も増えてきました。歯医者さんでは花瓶を持ってきて「この一輪挿しに合うお花を1本下さい」と来店される方もいます。

人との繋がりが広がってきましたね。この仕事はどんなときにやりがいを感じますか?

自分の選んできた枝ものやお花を喜んでいただいたときはやはり嬉しいです。そして季節ごとの枝ものやお花の香りについてお客様と談義することはとても楽しいです。

これから自分で何かを始めようと考えている人にアドバイスをお願いします。

そうですね。思ったことは間違っていてもいいので、やったほうがいいです。動いて自分で実践すると次に何をすればいいのかわかってきます。もし、違うと思えば動き方を変えればいいだけです。動くことで物事は変わるし変えられます。頭で考え過ぎないでまずは動いてみることです。

これからこの地域(たまプラーザ)は、どのような地域になるといいなと思いますか?

岩澤さん:ここは起業しやすい場所だと思います。そのような環境がたくさんあります。自分のやりたい仕事の場所を選ばない所だと思います。これからもそれがどんどんできる地域にな
るといいなと思います。

藤戸:今日はお時間いただきましてありがとうございました。

キャリアコンサルタント藤戸寛子のつぶやき

岩澤さんのすごいところは、自分を信じているところです。自分と対話をして自分が何をしたいのか心の声をしっかりキャッチしています。そして、キャッチしたら迷わず行動します。とにかくすぐに動きます。

頭の中で考えながら同時に動いているところがあり、岩澤さんの仕事がどんどん広がっている理由はそこにあるということがわかりました。

そして、岩澤さんの植物を選ぶ確かな目と知識、植物への愛情は、扱っているものを見るとすぐにわかります。どれもみな活き活きとして瑞々しいのです。

クライアントと長く続く理由は、岩澤さんのセンス、お人柄、要望に応えられる技術、そしてスピード感のある対応から生まれる信頼があるからだと思いました。

何かを始めようとするとき、大抵の人が失敗することを考えたり、自分には無理なのではないかと自分に制限をかけてしまいがちです。

そうするとなかなか行動に移せなくなります。もちろん、リスクをある程度考えて行動することも大事ですが、何もしなければ何も始まりません。「思い切って行動する」ことはとても大事なことだと岩澤さんのお話から得た大事なヒントです。